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江戸時代
石川県立美術館 金沢市出羽町2の1
縦 79.5センチ 左右 266.0センチ
県指定文化財 昭和43年2月26日指定
「御所絵」と称されているが、実は『源氏物語』の6場面を中屏風1双に描いたものである。平安時代中期に紫式部によって生み出された『源氏物語』は、優雅な題名をもつ54帖からなり、それが絵画化されて物語絵巻として多くの人々に好まれ、後世、「源氏絵」としてさまざまな分野に広がっていった。室町時代後期から江戸時代初期にかけて、54帖の各段から1画面を選び出し、色紙に描くことが、主として土佐派の画家によってなされ、その色紙を、画帖にしたり、屏風に貼り交ぜることも盛んに行われた。
それと同時に、大画面の屏風や障壁画に、この伝統的主題を積極的に取り上げ、古典風俗画として描くことも、各派の画家によって多く試みられた。本図もその屏風絵の1つで、6扇連続画面を、金箔押しの雲形で空間を区切り、「源氏絵」の中から、「桐壺」「紅葉賀」「澪標」「胡蝶」「若紫」「絵合」の6場面を、物語の順序に関係なく配置している。筆者は岩佐又兵衛と伝えられ、伝統的な土佐派風の練達した筆法で流麗に描かれている。
昭和60年「石川の文化財」より
桃山時代から江戸時代
個人 金沢市
(石川県立美術館保管 金沢市出羽町2の1)
左右 336.0センチ 縦151.5センチ
県指定文化財 昭和43年2月26日指定
俵屋宗達が下絵を描き、本阿弥光悦が和歌を書いた和歌巻や色紙は、多数伝世されているが、この作品のように、その色紙を屏風に貼り交ぜた作品は類品が少ない。金地屏風に、宗達の下絵、光悦の書になる、「古今和歌集」の春27首・秋7首・冬2首の歌を書いた色紙36枚を、各扇にほぼ3枚ずつ散らし、工夫をこらして貼り交ぜている。色紙を貼り交ぜた余白の金地に、彩色で薄・菊・桔梗などの秋草を装飾的に描きこんでいるが、装飾的な描写の中にも、いくつかの昆虫はその生態を極めて写実的にとらえ、配置の工夫がみられるなど、細かい神経の行き届いた描写であり、まことに情趣に富む作品である。
秋草図の筆者を特定するのは困難であるが、筆致は確かで、かなりの力量を備えた画家と思われる。金地と書の墨色、極彩色の秋草など彩色が豊かで、装飾性があり、情趣に富み、それらが、これだけ見事に調和した作品は少ないであろう。もと大聖寺藩主前田家伝来品と伝える。
昭和60年「石川の文化財」より
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