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桃山時代 狩野光信筆
大乗寺 金沢市長坂町ル-10
(石川県立美術館保管 金沢市出羽町2-1)
縦 152.0センチ 左右 355.0センチ
県指定文化財 昭和43年2月26日指定
耕作図は、中国の機織図に基づいて、日本で発達した画題で、室町時代以降の狩野派の主要なテーマの1つである。この作品は、季節の推移を、通例通りに右から左へ展開させながら、中国風俗の農夫たちが四季の農作にいそしむ情景を描いている。右隻右方の冬枯れの農家のたたずまいにはじまって、中央にかけて、春の準備と田起こし、左方では、田植えと灌漑、左隻では、刈り入れから脱穀にいたる秋の諸作業が、金地に濃彩な彩色で、密画風に描かれている。諸人物は生き生きとし、家屋の描線ものびのびしており、樹木の筆法や岩や道の皴法などに狩野派の特徴を示している。剥落が著しいが、画面全体に配された源氏雲には胡粉を盛り上げて金箔押しを施した工芸的な技法を用い、桃山時代特有の装飾化がはかられている。これらの点と、全体として非常に繊細な描写がなされていること、奥行の深い構図法を採っていることなどから、筆者の款印はないが、狩野光信(1565~1602)筆と見られる優作である。
昭和60年「石川の文化財」より
江戸時代前期
真宗大谷派金沢別院 金沢市安江町15-52
(石川県立美術館保管 金沢市出羽町2-1)
左右 355.0センチ 縦 154.3センチ
県指定文化財 昭和43年2月26日指定
金箔地の画面一杯に、重厚な岩絵具を用いて菊花を描き、とくに大輪の菊花は、胡粉を用いてはなはだしく盛り上げている。葉は緑青と墨で、菊花と調和するように、たらし込みの技法をとり入れて濃彩に仕上げている。さらに牡丹・薄・萩・すみれ・つくしなどの四季の花をあしらって、見るからに絢爛豪華な装飾的効果を高めている作品である。作風は、俵屋宗達の草花図よりも一歩進んだ繊細な装飾化の傾向がめだち、各隻の下方隅の部分に、宗達工房の「伊年」朱文円印が捺されており、宗達の後継者と見られ、前田家に招かれて金沢に逗留した俵屋宗雪か、あるいはその周辺の画家の手になるものであろう。この種の「伊年」印の四季草花図の作品は、金沢地方に今日でもいくらか伝世されているが、それらの中でも最も豪華な作品として、古くから知られ、前田家からの拝領品と伝える。
昭和60年「石川の文化財」より
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