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南北朝時代
印鑰神社 七尾市山王町1-13
(石川県七尾美術館保管 七尾市小丸山台1-1)
縦 121.3センチ 横 161センチ
県指定文化財 昭和55年7月10日指定
印鑰神は、国衙の公印と、不動倉などの国衙の倉庫の鍮(錠)が、神格化されたもので、国府所在地に、国衙の守護神として祀られる。この垂迹図は、能登の国府と深いつながりをもつ印鑰明神として、古くから印鑰神社に伝わる神道垂迹図である。絹本の大画面の中央本尊は、宝冠を載き、右手に唐扇を持ち、左手に三宝珠を棒げて唐様の衣をつけた女神立像で、その四方に、やはり左手に一宝珠を持ち、右手を垂れた女神四体を随えている。さらに画面四隅には、四方を守護する持国天・増長天・広目天・多聞天の四天王を描いている。目をくりっと見開いて立ち、その足元の天邪鬼の顔はおだやかな表情である。画面上部中央には、涌雲に3つの宝珠が描かれている。
また左下の二天の間に描かれた三面六臂の忿怒像のそれぞれの手に農耕具や工務具を持たせている。肥痩のあるゆったりとした豊満な線描で像容を描き、宝冠などに金彩を施した華やかな色彩である。素朴な表現のなかに華麗荘厳な趣があり、重厚さも感ずる堂々とした垂迹図である。印鑰神の図様はほかに作例がなく、製作年代は南北朝を降らないと考えられ、貴重な遺作である。
昭和60年「石川の文化財」より
江戸時代前期 俵屋宗雪筆
個人 金沢市
(石川県立美術館保管 金沢市出羽町2-1)
左右 356.8センチ 縦 163.2センチ
県指定文化財 昭和57年4月6日指定
重要文化財「紙本金地著色秋草図屏風」(東京国立博物館蔵)と款印が共通する作品で、群鶴を主題とする屏風である。金地に、ゆるいカーブの土坡を緑青で描き、その上にそれぞれの姿態で群れる鶴を克明な筆致で描いており、形や線描は非常に力強い。ところどころに配した萩・笹・松、そして水に浮かぶ沢瀉など、羅列的配置の感は免れないが、金箔地の効果を十分生かした大らかさを感じさせ、気分の大きさの失われていない迫力のある作品である。こうした、金地に緑青の濃淡で起伏する土坡を描き、その上に対象となる草花や動物を細密ともいえる写実的な描法で描く、左右の広がりのある装飾的な構成法は、宗雪画の特徴ということができる。各隻のはしに「宗雪法橋」の款記と、判読不明の白文小方印、「伊年」朱文円印がある。宗雪が、加賀藩に仕えた後の作品と見られ、加賀藩3代藩主前田利常が、明暦3年(1657)に建立した梯天満宮(現小松天満宮)に、利常自身が寄進したとの伝えがあり、加賀に古くから伝世されている優品である。
昭和60年「石川の文化財」より
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