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江戸時代末期
石川県立美術館 金沢市出羽町2-1
長さ144.0センチ 幅88.0センチ 長柄の長さ520.0センチ
県指定文化財 昭和45年11月25日指定
この輿は、加賀藩14代藩主前田慶寧(1830~1874)の6女貞姫が、生後3カ月で専光寺(金沢市本町2丁目)へ養女として入寺した時に使用されたもので、加賀藩細工所の各部門の細工人の技術を結集して製作したものである。全面黒漆塗地に金高蒔絵で前田家の紋所梅鉢を全体にバランスよく置き、その間をのびのびとした曲線で牡丹唐草文様を配している。唐草文様は薄肉高蒔絵で、葉の一部に螺鈿や金貝の技法を用いるなど、豪華で華麗である。金具は梅鉢に牡丹唐草模様を毛彫し、地を魚々子打ちした精緻なもので、御輿の要所々々に止められ、それが柱・桁・框・棧などの木割との構成が美しく、全体の装飾性を高めている。内部は漆塗り梨子地を施し、腰の4面は金地に著色で唐子遊び図が美しく描かれており、加賀藩の絵師佐々木泉景の子、泉玄の筆と伝えられているが確証はない。乗物としての機能的制約を受けながら、輿の本体・屋形・長柄などは洗練された優美な姿であり、数少ない優品である。
昭和60年「石川の文化財」より
オランダ 17世紀
石川県立美術館 金沢市出羽町2-1
高さ10.9センチ 左右8.5センチ
県指定文化財 昭和45年11月25日指定
江戸初期になると、いわゆる大名茶会が盛んとなり、日本各地の茶陶のほかに、長崎を窓口として、オランダの東印度会社によってヨーロッパの陶器が請来され、また日本人好みの茶陶を注文して焼かせるようになる。この香合も、ヨーロッパ渡来の茶道具の1つで、俗にいう「紅毛のやきもの」である。17世紀頃、オランダのデルフト窯で製陶されたものといわれ、細い頸をのばした優美な姿で、胸から後方羽根に向かって切れ目があり、上下2つに分けることができる。卵殻色の白釉が厚くかかり、一刀彫でもみるようなざんぐりとした作陶は、羽毛の柔らかさをよく感じさせる。嘴や目の輪郭、足に赤を彩り、足もとに青を点じて、水鳥のさわやかさをあらわしている。頸に引かれた2本の線は可愛らしさをみせ、小品ではあるが、優雅で親しみ深い名品である。伝世の類品は、藤田美術館の白雁香合のみで、わが国での双璧といわれ、古来名高い。もと金沢の山川家に伝わった。
昭和60年「石川の文化財」より
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