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桃山時代
石川県立美術館 金沢市出羽町2-1
(茶碗)口径10.4~10.9センチ 底径4.8センチ 高さ8.4センチ
(添状)縦23.1センチ 横34.0センチ
県指定文化財 平成30年1月30日指定
本作品は、焼成温度の関係で、黒釉はガラス質の光沢が生まれておらず、かせた肌合をもつ。わずかに口造りを内側に抱え込み、見込みには茶溜りがある。腰に穏やかな丸みのある半筒形の端正な茶碗で、高台はやや高く、内には兜巾があり、手の中にしっくりと納まる穏やかな作行きの茶碗である。銘の「北野」は、千利休が天正15年(1587)の北野大茶湯に用いたと云われることに由来している。
内箱蓋裏には、表千家4代江岑宗左(1613~1672)による「利休判在之ヲ覚今程キエ見不申候 黒茶碗 左(花押)」の書付があり、この書付は所有者の興善院に依頼されたことが添状から解る。蓋表には、表千家5代随流斎宗佐(1650~1691)による「北野黒 興善院 内老父書付有 宗左(花押)」の書付がある。
伝来は千利休所持の後、興善院から塗師の中村宗哲家に渡り、表千家7代如心斎が買い取り、江戸の豪商冬木家が千利休の遺偈を千家に戻した際に返礼として贈られた。この事実は、本作品が利休遺偈と同等の意義と価値があるものと表千家において判断されていたことを示すものである。
長次郎の楽茶碗は、黒楽と赤楽に大別されるが、千利休のわび茶の究極を象徴すると考えられているのが黒楽茶碗である。本作品は千利休が確立したわび茶の思想が凝縮された名品であり、県指定有形文化財としての価値を十分に有すると言える。
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