ここから本文です。
江戸時代前期
個人 加賀市
口径47.8センチ~46.3センチ 高さ13.7~11.8センチ
県指定文化財 昭和35年5月27日指定
力強い筆致と、濃く渋い色調のすぐれた絵付の多い「古九谷」様式の色絵磁器の中に、どこか異国的な味をもつ古拙な民画的表現の1群がある。それを代表するのが泊舟図大鉢で、近代人の美意識に強く訴えかける名品である。「古九谷」でも初期に属する、やや不整形の胎土の2段形の大平鉢で、見込みには、白地に泊舟と網干と櫂と岩など組合せた海辺の風景を、黒線に紫・緑・黄の渋い色調で抽象画風にあらわし、その周辺を緑の山形文が、まるく放射状にしめくくっている。外縁部は、イスラム系とも見られる異国的な曲線感をもつパルメット波状文を、赤の袋描とし内部を白くのこし、さらにそれが外周部の淡い染付地に助けられ、文様が強く浮かび上がり動感やリズム感を強め、見込みの静かな民画的な風景と対比的な効果を見せている。外面は、白地に染付の細い線を3段に巡らし、上・中段の間には、線の早い動きをもつ渦文状の雲文を赤で3カ所に配している。
昭和60年「石川の文化財」より
江戸時代前期
石川県立美術館 金沢市出羽町2-1
口径43.0センチ 底径18.8センチ 高さ9.5センチ
県指定文化財 昭和42年10月2日指定
日本古来の鶴文様と、異国趣味ともいうべきトランプの文様を、図案風に組合わせて配した意匠構成は、全く新しいロマン的なにおいを漂わせているということができよう。中央に舞鶴4羽を井桁に配し、その周囲に、紫絵具でいろどったスペード形を四方に置き、そのスペード形の間にも舞鶴を4羽描いている。鶴の頭と背中の部分、それにスペードのなかに散らしたハートの形は、白抜きになっており、色彩効果を高めている。色調は、鶴の羽根と尾が黄、スペードが紫、その他の地の部分は緑1色とわずかに三彩であるが、白抜きの部分と相まって美しいハーモニィを見せている。鶴やスペード、ハートを描いた呉須の線描、緑1色で塗りつぶされている地模様の黒線による石畳文様の線描は、それぞれ抑揚があって太くて力強く、これがこの作品を豪放な趣にみせており、青手古九谷の特色となっている。意匠構成にふさわしく古九谷では最も大振りの作品である。
昭和60年「石川の文化財」より
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください
同じ分類から探す