ホーム > 連絡先一覧 > 白山自然保護センター > 出版物 > 「石川県白山自然保護センター研究報告」(第22集)要約
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東野外志男
白山火山の溶岩中の斜長石斑晶には、汚濁帯を有するものと有しないものが一個の岩石中に共存する。それらの主要部分は、汚濁帯の有無にかかわらずよく似た科学組成をもち、同じ酸性マグマ中で成長したと考えられる。汚濁帯は塩基性のマグマ混合の影響を受けて形成されたものである。斜長石斑晶の主要部分の科学組成は形成時期の異なる火山体の間でも大きな差がなく、白山地域において、酸性マグマを形成する条件がここ30~40万年は大きく変わっていないことを示唆する可能性がある。
白山火山噴出物の汚濁帯を有する斜長石斑晶と汚濁帯を有しない斜長石斑晶の化学組成の比較(PDF:10,014KB)
米山競一
白山地域5村のうち鳥越村に分布するシダ植物の目録で著者が採取したものを中心に94種類を紹介している。県内では耕地整理等で生育地を失い減少しているミズワラビが広瀬地内で見つかり、希少種とされているイブキシダが西佐良地内から広瀬地内の手取川峡谷沿いに広く分布していることが確認された。
このほかツヤナシイノデ、ナメライノデ、ウスヒメワラビなどの希少種の分布も報告している。
白山地域のシダ植物目録(五)・鳥越村地内(PDF:3,920KB)
上馬康生・三原ゆかり
今までに石川県内では11種のコウモリの生息が確認されていたが、今回新しい種類であるヒナコウモリが、1995年10月6日に白山の別当出合で発見された。雌雄2頭がコンクリート壁に掛けられた案内板の裏側に潜んでいたが、天候の急変で気温が急激に下がったため、寒さを避けるためにもぐり込んでいたと考えられる。
石川県内白山地域で捕獲されたヒナコウモリ(PDF:1,356KB)
滝澤 均・伊沢 紘生・志鷹 敬三
白山地域のニホンザルは、1995年冬現在、25群(高三郎山のタカサブロウ群を加えると26群)の群れが確認されている。1987年からの暖冬による漸増傾向は一段と強くなり、今冬の個体数調査でおよそ1,130頭の個体の生息が推定され、今後も漸増傾向は維持され急激な減少はないだろう。群れの動態については、新たな群れの分裂が確認され、昨年分裂した群れの由来が明らかになった。また、一時的に群れが合流しているものも観察された。群れの遊動域については大きな変動は観察されなかった。
白山地域に生息するニホンザルの個体数と遊動域の変動-その9-(PDF:9,052KB)
林 哲
1995年5月から1996年1月まで、標識された4個体を中心にニホンザルの動向を23日間調査した。この結果、これらの所属している群れは、夏期は標高1,000m以上の山地帯へ、冬期は尾添川または手取川沿いの低山帯に移動していることが分かった。この季節的移動は、ニホンザルの生活史において安全な場所での出産と育児、食物の採取、避暑効果等生態的意義がある行動と推察された。
白山麓の標識されたニホンザルの行動圏(PDF:4,908KB)
橘 礼吉
かつて白峰村には、焼畑・養蚕・炭焼き等を営む山中に孤立した一軒家で生活する「出作り」という生活慣行があった。山間部奥地に位置する出作り地は、寒冷・豪雪・強風等の厳しい気象条件の場所にあるため、強風襲来で本拠地の住居・母屋が崩壊することがあった。そのため避難用の小屋(ヌケ小屋と呼ぶ)を建てたり、横穴を掘ったりして対応した。標高1,000m 内外で、独立して生活する山の人々の実態として、強風避難用ヌケ小屋の生活を描写した。
白山麓高地出作りのヌケ小屋-白峰村大杉谷出作り群の強風避難小屋(PDF:10,637KB)
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