「石川県白山自然保護センター研究報告」（第30集）要約

論説「新白山火山南竜火山灰中のスコリアを含む火山灰層の岩石学的特徴」

酒寄淳史・中塚妙子・東野外志男
二千数百年前の南竜火山灰中のスコリアを含む火山灰は、白水滝溶岩の前期溶岩を流出した際に噴出したものである。また、この火山灰はブルカノ式噴火を主体とする白山火山の噴火史の中で、スコリアを生産するようなストロンボリ式噴火が起きたことを示すものである。

論説「新白山火山南竜火山灰中のスコリアを含む火山灰層の岩石学的特徴」（PDF：444KB）

「白山高山帯・亜高山帯における低地性植物の分布について(3)」

野上達也
白山の高山帯や亜高山帯の登山道などでは、本来なら平地にのみ見られるオオバコなどの低地性植物が見られる。これら低地性植物のうちシロツメクサ、オオバコ、フキ、スズメノカタビラの白山における分布調査の第3報。

「白山高山帯・亜高山帯における低地性植物の分布について(3)」（PDF：1,391KB）

「白抜山で採集された昆虫類」

富樫一次
白山の北西麓に位置する白抜山（891m）で採集したコウチュウ目3種、ハチ目16種、ハエ目2種の計21種の記録。このうち、ハチ目については県内初記録2種、本州初記録1種を含む。

「白抜山で採集された昆虫類」（PDF：103KB）

「白山麓の樹林における地表性ゴミムシ類の分布」

平松新一
白山麓の3樹林で地表性ゴミムシ類の調査を行った。出現種の分布は(1)広い範囲、(2)スギ、コナラ林中心、(3)ブナ林中心、(4)限られた地域の4パターンに類型化された。林相がゴミムシ類分布に及ぼす影響は小さく、それ以外の要因の影響が考えられた。

「白山麓の樹林における地表性ゴミムシ類の分布」（PDF：630KB）

「白山の高山帯におけるカラスの出現」

上馬康生
白山の山頂部では、1980年代まで確認されていなかったカラスが近年確認されるようになった。今のところ、ごく限られた個体や小群であり、生態系に与える影響はほとんどないと考えられるが、今後ともカラスの動向については注意を払っていかなければならない。

「白山の高山帯におけるカラスの出現」（PDF：583KB）

「石川県内におけるヤマネの生息状況」

三原ゆかり・野崎英吉
日本固有の哺乳類で国指定の天然記念物、環境省のレッドデータブックでは稀少種にランクされているヤマネについて、石川県内の生息情報をとりまとめた。新たに5kmメッシュ数で5区画、市町村では尾口村で生息が確認された。特筆されるのは、県内で確認の無かった高山帯の白山室堂での確認である。

「石川県内におけるヤマネの生息状況」（PDF：423KB）

「石川県におけるニホンカモシカの分布域―低標高地および能登地域への分布拡大―」

上馬康生・野崎英吉
近年、ニホンカモシカの低地での出現や、今まで記録のなかった能登地域での記録が得られるようになった。低地の記録としては加賀市や小松市の標高50m前後のところに、また1989年調査では記録のなかった辰口町、津幡町、押水町、志雄町、鹿島町、七尾市の丘陵帯で記録された。

「石川県におけるニホンカモシカの分布域-低標高地および能登地域への分布拡大-」（PDF：1,783KB）

「クマの食料としてのスギ形成層周辺部糖含有量について」

西真澄美・野崎英吉・八神徳彦・上馬康生・中田彩子
石川県において昭和50年代後半から小松市を中心にツキノワグマによるスギの剥皮被害が発生している。クマは餌としてスギの樹皮を剥ぎ、形成層周辺部を食べているという視点から、この部位の糖含有量を調べた結果、果糖、ブドウ糖などが含まれており、この糖分を求めてクマが剥皮することが示唆された。

「クマの食料としてのスギ形成層周辺部糖含有量について」（PDF：226KB）