ホーム > 連絡先一覧 > 石川県農林総合研究センター 林業試験場 > 刊行物 > 石川県林業試験場業務報告 > 石川県林業試験場 平成10年度 業務報告 > 2.有用樹木の遺伝的改良と活用に関する研究
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予算区分 県単
研究期間 平成10~15年度
担当科名 生物資源科
担当者名 三浦 進・千木 容
能登地域の森林資源を代表するアテは、高付加価値材として評価されつつある。一方木材に対する、工業材料としての要求性能の高度化に伴い、形質の不揃いや、ねじれや入り皮が消費拡大の阻害要因として指摘されている。そこで形質の優れたアテを育種することで、次世代のアテ林の資源の質的向上と、形質の均一な木材の安定供給が可能な条件整備を図る。
1.アテのクローンを識別し、遺伝的構成を明らかにするためRADOマーカーに よるDNA分析を行った。その結果アテのクローン識別の手法が確立され、ま たマアテは遺伝的に多様なクローンから構成されており、形質のばらつきが 大きいことが明らかになった。
2.ねじれや入り皮の少ないマアテ系品種の育種に取り組んだ。昨年度の調査 で外部形態から選木した輪島市、門前町地区の35クローンを伐採し、木材 性能試験を行った。製材品のねじれの原因となる、軸方向要素の傾斜を示す 繊維傾斜度と、強度の指標となるヤング係数を主な基準に、供試木の形質を 評価した。最大繊維傾斜度が4%以下(クサアアと同程度)のクローンが5 クローン、ヤング係数が平均より10%以上大きいクローンが4クローン得 られた。最大繊維傾斜度が小さく、ヤング係数が大きい4クローン(MK3,MK4,MYM,MKY)を優良形質クローンの候補に選定した。
3.短期間に苗を増殖する方法を検討した。アテは挿し木が容易なため、採穂 園からの挿し穂の供給が苗生産の基本となる。しかし採穂園の造成には、多 数の苗と10年以上の期間が必要である。そこで補助的な苗増殖法として、 組織培養を検討した。葉条を材料に、CD培地と植物ホルモンの組み合わせで シュートを誘導することにより、7ヶ月間で約3倍の増殖率が確認された。
地域生物資源としてのアテの重要性を評価するために、アスナロ属植物の中での、アテ遺伝資源の位置付けを明らかにする必要がある。また優良形質クローンの候補木は、生長特性など未調査の形質を調べる必要がある。苗の生産に関しては、アテに適した採穂木の仕立て方を検討すると共に、短期大量増殖の方法をさらに検討する必要がある。
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