建造物の調査(27年度)
城門の調査
事業概要
平成18年度から金沢城内の城門について、門の総数、配置に加え、それぞれの構造、規模、役割等の解明を行っている。
本年度は、『加州金沢御城来因略記』(石川県立図書館蔵、以下『来因略記』)等の史料から得た各城門に関する情報を整理し、金沢城における重層の城門の類型等について詳細な考察を行った。
主な成果
金沢城に見られる重層の城門の類型に関する考察
- 従前の城門の論考では、重層の城門としては渡櫓型と楼門型の櫓門には言及されていたが、『来因略記』等の調査によって、金谷門等の門を備えた重層の長屋や、数寄屋唐門・松坂門のように従前の櫓門とは異なるタイプの櫓門様の城門が、金沢城にかつて存在していたことが判明した。そこで、それらの城門について、従前の2型式の櫓門と比較し考察を行った。
建造物の基礎的調査
事業概要
これまでに引き続き、加賀藩御大工を含む加賀藩内の大工が手掛けた建築物に関する基礎的調査等を行った。
加賀藩内の大工に関する基礎的調査
- 大聖寺藩の下級武家の屋敷の遺構について、本年度は増田達男専門委員の指導を受け、新たに屋根・茶間の天井の仕様等に、金沢の藩足軽屋敷と相異点が見られるとの指摘があった。
- 加賀藩お抱え大工である山上家が関わったとされ、昨年度下調査を行った旧大聖寺藩領内に所在する菅生石部神社の神門等の建物及び棟札等の史料について、本年度改めて専門委員の指導を受けた。
神門については、同じ山上善右衛門吉順が手掛けた瑞龍寺の手法と共通する点も見られるが、細部は洗練されておらず、工事は地元大工主体で行われたと考えられた。また、建設経緯が不詳の舞殿については、詳細調査を実施すれば当初状態も推定可能との示唆があった。
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