建造物の調査(26年度)
城門の総合調査
事業概要
平成18 年度から金沢城内の城門について、門の総数、配置に加え、それぞれの構造、規模、役割等の解明を行っている。
本年度は、金沢城の城門の形式について詳細な検討を行い、各城門に関する情報を『加州金沢御城来因略記』(石川県立図書館蔵、以下、『来因略記』)等から整理した。これに加え、加賀藩に関係する大聖寺藩の藩邸(陣屋)の割場門を移築したとされる打越勝光寺(加賀市)の寺門と、本丸附段の「雁木坂」に類似した構造の城門も持つ松本城(長野県)の現地調査を行い、本調査のまとめの作業を行った。
主な成果
「本丸附段 雁木坂」の構造に関する考察
- 「雁木」は、城郭で使われる石段形式の1類型を指す一般的な名称であるが、ここで言う「本丸附段 雁木坂」(以下、「雁木坂」)は、金沢城の二ノ丸から本丸附段への極楽橋を渡った本丸附段の口に設けられた石段による坂のところを指す。
かつて、「雁木坂」は、極楽橋の袂の方に柵及び柵門が設けられ、形式は特定できないが曲輪内部の方に一層の坂上門が設けられており、この2つの門が喰違状となっていた。また、その他の部分は土塀で完全に囲われており、桝形を形成していたことが、『来因略記』の図から分かった。
このことから、この「雁木坂」は、大きな高低差を持った特殊な喰違虎口であっただけでなく、櫓門を備えてはいないものの、希少な喰違型の桝形門に類する遺構と見られる。また、極楽橋の本丸附段側の柵門は門扉を備えていなかったように描かれる。
伝大聖寺藩邸(陣屋)割場門の考察
- 江戸後期の格式のある薬医門であるので、藩邸の門とする信憑性は低くはない。
建造物の基礎的調査
事業概要
これまでに引き続き、金沢城建造物の技術・意匠の検討、加賀藩の御大工に関する基礎的調査等を行った。
加賀藩が造営・修繕した建築物に関連した調査
- 橋爪門二ノ門において、復元工事中および工事完了後に櫓門の建築に関する検討を行った。また、金沢城下の下級藩士の屋敷と比較するため、大聖寺藩の下級武家の屋敷とされる2棟を現地調査した。外装の板の張り方に相違は見られるものの、平面構成は両藩の屋敷とも全く同じであったことが判明した。
加賀藩作事方等に関する調査
- 文化度の二之丸再建を行った造営方に関して、常設の作事方との相異点を考察した。造営方は、工事に関係する様々な部署から人材が集められ、速やかに工事を進行することを目的としていたと見られ、対象工事ごとに設置されたことが窺われた。
加賀藩内の大工に関する基礎的調査
- 藩お抱え大工であった栗林家の系統中で、これまで全く存在が知られていなかった2代目太右衛門に関し、2代目太右衛門と推定される銘が記載された史料を確認した。また、加賀八家奥村家(嫡流)の作事方御用を代々務めた成田家に関し、藩直臣のお抱え大工である家系と密接な関連があったことが判明した。
<- 平成25年度の成果 平成27年度の成果 ->