建造物の調査(17年度)
1 尾崎神社の総合調査
中門等の実測図作製を名古屋工業大学の麓研究室に委託し、7月・12月に現地補足調査を行った。また、彩色・漆塗の調査を昨年度に引き続き奈良文化財研究所の窪寺氏(建造物研究室長)に依頼し、拝幣殿について現地調査を行った。
なお、関連建築物の調査として、幕府大工頭木原義久が設計し、尾崎神社と同じく本殿が三間社流造となる唯一の東照宮である仙波東照宮(川越市)と尾崎神社と建築時期が近い長谷部神社(穴水町)の現地調査を行った。
主な成果
- 仙波東照宮の全体は非常によく似ているが、ディテールに違いが見られる。花慰斗型釘隠が使われていないなど、金具類には多くの相違があることなどを確認した。
- 長谷部神社は、後世の修理等が見られるが、江戸初期のオリジナルを残す。本殿内の厨子が江戸中期のものらしいこと、金具が特殊で地域色豊かであること、拝殿も本殿並みに古い可能性があることなどの指摘がなされた。
- 平成15~17年度調査の報告書 『金沢東照宮(尾崎神社)の研究』(金沢城史料叢書3)を刊行 した。
2 建造物の基礎的調査
本丸櫓群の面類に関する考察のまとめを行ったほか、加賀藩大工の特徴を探るため、寺社や建造物の現地調査を行った。
現地調査の対象は、長家文書(穴水町歴史民俗博物館保管)、妙成寺(羽咋市)及び松風閣・本多屋敷長屋門(金沢市)などである。
主な成果
- 本丸櫓群の図面類を整理・比較することにより、三階櫓及び辰巳櫓についてその変遷の一端を明らかにすることができた(『金沢城研究』第4号に掲載 )。
- 大工の坂上家が長家の家臣であったことを「先祖由緒一類附帳」で確認した。
- 松風閣については、後世の改造が相当見られ、構造や床の棚、欄間、飾金具以外は当初の姿の見極めが難しく、長屋門も移築に際して改造がされたなどの所見を得た。
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