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昭和6年(1931)
社会福祉法人聖霊病院 金沢市長町1丁目5番30号
県指定文化財 令和5年1月6日指定
聖霊修道院聖堂は、ドイツ人宣教師ヨゼフ・ライネルスにより創設されたキリスト教カトリック系の医療施設である聖霊病院において、修道院の附属聖堂として、昭和6年(1931)に建設された。設計は、カトリック系教会等の建築を数多く手がけたスイス人建築家マックス・ヒンデルによる。
聖堂の平面構成は、中央の身廊とその両側の側廊からなる本格的な三廊式バシリカの形式をとる。聖堂の軸線は南北にとられ、南を正面とし、北東端に鐘塔が付く。外観は、二層の切妻屋根に、白く塗った下見板張りの外壁とし、半円アーチや円形の窓を設ける等、全体的にロマネスク建築様式を基調としたデザインでまとめ、隅角部の付柱や窓框は焦茶色に塗って減り張りをつけている。鐘塔は、基部を角塔、上部を面取りした八角塔とし、頂部には十字架を頂き、建物全体のアクセントとなっている。
身廊は、中央に半間幅の通路を設け、祭壇に向かって右側は畳敷、左側は椅子を配置する。身廊の正面は祭室で、円弧状の平面をなし、周囲より一段高くなっており、祭壇を設ける。祭室の左右両側には聖具室が付き、右側のものは鐘塔の直下にあたり、鐘を操作することができる。身廊の上部は吹抜空間であり、漆喰仕上げによる横断アーチを架ける。
側廊は、葭を簾状に編んだものを下地材に使用して曲面を作り、漆喰で仕上げた交差ヴォールト風の天井とする。側廊の交差ヴォールト風の天井と身廊の横断アーチはロマネスク建築様式の諸要素を日本の伝統技術を用いて表現したものであり、それらを受ける列柱は、ブロック型柱頭で構成され、色調や質感が金箔貼りや黒漆塗りを意識させるなど、随所で和風の仕上げとなっている。
以上のように、聖霊修道院聖堂は、西洋と日本の建築様式と伝統技術が見事に調和した独創性が高い教会堂建築として、昭和初期の姿をよく留めており、極めて価値が高いことから、有形文化財に指定し、その保存を図ることが必要である。
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