石垣保存管理技術等の総合研究(29年度)
事業概要
平成29年度は、金沢城内の変形石垣について詳細調査を実施するとともに、石垣保存管理技術に関する事例収集等を行った。
主な成果
石垣の保存状態の把握に関する調査
a.変形状態
- 変形石垣の内部調査を行った。
対象:
(1)数寄屋屋敷西堀縁(丸の内園地)
→斜面滑動に伴う土圧影響等による変形
(2)三ノ丸北(九十間長屋下)
→地震(安政2年)による変形
方法:石垣の隙間から小型カメラを挿入し、内部変形の状態を観察した。
結果:
1.土圧影響等に伴う変形箇所(1)では、介石(築石の奥側下部に挟む固定用の小石)が破断しつつも本来の位置を保ったまま緩んでいた(写29、68)。改修境界付近の裏込めには土砂の流入が見られた(写真59)。
2.地震による変形箇所(2)では、健全な箇所(写真26)に比べて栗石の破断が頻発していた(写真8、11)。裏込めには土砂流入が見られなかった。
3.(1)(2)ともに、孕み出しによる内部の空隙は、築石間では顕著だが、裏込め礫中には及んでいなかった。
4.孕み出した石垣の内部は、変形を発生させた要因によって状態が異なる可能性がある。石垣内部の状態を観察することで、内部変形の症状を把握するとともに、変形要因の推定にも役立つ可能性が出てきた。引き続き調査を継続したい。
b.変形動態
- 三次元データの差分比較による経年変化量の面的把握を行った。
対象:数寄屋屋敷西堀縁石垣(北面)
方法:三次元計測データの差分比較(H18→H28)
- 三次元データを活用した変形量の可視化を行った。
対象:数寄屋屋敷西堀縁石垣(西面)
方法:H28 計測データの解析
検討会の開催
伝統技術(石垣)専門委員会委員等による検討会を開催した。
・第12回検討会(6月12日)
平成28年度成果の検討と課題の整理
・第13回検討会(3 月23 日)
『城郭石垣への鉄筋類挿入工法の適用と事例』
【概論】城郭石垣への鉄筋類挿入工法の適用…西形達明(伝統技術(石垣)専門委員会委員)
【報告】延岡城における鉄筋挿入工法による石垣補強について…藤川直哉(延岡市都市計画課)
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