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本事業は、文化財石垣の保存・管理に必要な諸技術や方法等について、金沢城跡の石垣を対象として総合的に調査研究し、本質的価値の保存継承に資することを目的としている。
平成26 年度は変形が著しい石垣の外観調査を継続すると共に、動態観測、安定解析、地盤探査、他城郭の事例研究等、多角的なアプローチで調査研究に取り組んだ。
三次元レーザー計測データから壁面の凹凸や角度変化等をカラーチャートで視覚的に表現し変形の範囲や量を面的・立体的に把握するもので、平成24 年度から重点的に取り組んでいる。
平成26 年度は5箇所9面の石垣で可視化図を作成した。また、変形状態が的確に表現できるよう色彩区分を微調整するなど、データ処理方法の改善にも取り組んだ。
変形の顕著な石垣について、石材破損や緩みなど測量図には表現されにくい変形・破損の細部症状を現地で確認すると共に、過去の修理(変形)の履歴(時期・回数、範囲・規模、内容等)を検討し、現在の変状との関連性を検討している。平成26 年度は計25 箇所中18箇所の調査を進めた。現在の変形が当該石垣での初発と見られる箇所、再発である箇所、再発と修理を繰り返してきた常習的な変形箇所が認められた。
変形石垣の動態観測データや新旧の写真比較等から、変位の進行具合を検討した。変形状態にある石垣には変位が継続・累積している箇所と、変形状態のまま安定化している箇所が認められた。
・修築記録の整理 損傷又は修理の記録が残る石垣をリストアップし、時期・内容・要因等の整理を進めた。
・変形箇所の安定解析 変形の著しい数寄屋屋敷西斜面を対象に、工学的方法(FEM 解析)で地震時の挙動や、補強効果等のシミュレーションを進めた。
・石垣背面の物理探査 数寄屋屋敷西部で地中レーダー探査及び電気探査、鼠多門外で地中レーダー探査を実施し、変状調査への物理探査の適用方法等について、実践的な取り組みを進めた。
・事例調査 石垣変形の発生状態、動態観測、保存管理の方法等について、他城郭の事例を調査した。
[現地調査]弘前城跡(青森県)、盛岡城跡(岩手県)、甲府城跡(山梨県)、名古屋城跡(愛知県)ほか
[事例研究]仙台城跡(宮城県)、小峰城跡(福島県)、村上城跡(新潟県)、島原城跡(長崎県)ほか
・検討会 伝統技術(石垣)専門委員会委員による「検討会」を計4回開催し、城内石垣の現地調査及び資料分析、関連城郭の事例研究等を行った。[開催日]6月6日、8月1日、10月17日、2月23日
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