城郭庭園等の総合研究(28年度)
事業概要
本事業は、金沢城に関する庭園の構造・機能及びその変遷等について、学際的・総合的に検討することにより、金沢城の特質を一層明確にし、併せて城郭の構成要素としての庭園の意義の解明に資することを目的とする。本年度は、東ノ丸庭園遺構のボーリング調査、兼六園・尾山神社(金谷御殿)庭園の現地調査、報告書の原稿作成等を行った。
主な成果
東ノ丸庭園遺構のボーリング調査
- 平成26年度のトレンチ調査(2014-1・2地点)の結果を踏まえ、発掘では到達できなかった近世初期(庭園)造成土の下部延長等を対象に、池状遺構の底面や法面の状態を確認した。
- H28-3地点では、標高55.6~55.1m付近で瓦堆積層を確認した。遺構底面を覆う、廃棄層(寛永8年(1631)大火後)と考えられる。瓦層の下位では、瓦・礫・粘性土が混在する状況が40cmほど続き、明確な造作は認められないが、この間(55.1~54.7m)に底面が想定される。過年度結果からの推定(標高54.9~54.8m)ともおおむね整合する。
- H28-1地点では近世初期造成土を高いレベル(標高56.5m)で確認した。本地点は池状遺構の外縁に相当すると考えられる。
- H28-2・4地点では、2014-1・2地点で検出した特徴的な近世初期造成土の下部延長をそれぞれ確認した。両地点は池状遺構の法面に相当すると考えられる。
- 今回の調査で、池状遺構の底面のレベルがおおむね把握できた。また法面の位置等についても、想定と合致した。これらを踏まえ、過年度のボーリング資料について改めて検討し、池状遺構の大略規模、形状等を推定した。
兼六園・尾山神社(金谷御殿)庭園の現地調査
- 兼六園では、敷地西辺の水路や主要な流れの護岸等について、補足確認・計測等を実施した。また、兼六園の主な構成要素のうち、竹沢庭の山崎山・七福神山・鳳凰山、蓮池庭の黄門橋南井戸周辺等の石組について、配置状況や岩石種組成等を検討した。
- 七福神山では能登産の安山岩(福浦石)が主体であるが、山崎山・鳳凰山・黄門橋南井戸周辺では、火山礫凝灰岩とみられる滝坂石が多く認められた。絵図や文献との照合から、滝坂石の利用は19世紀中葉頃に流行したと推定した。
- 尾山神社(金谷御殿)庭園では、池西岸の急斜面に大型石材が集中していることを確認し、併せて岩石種の構成等を検討した。一帯は明治10 年代まで架かっていた刎橋の袂に相当し、石組も南北に二分される。また本庭園は、慶応~明治初期の大規模修築によるにもかかわらず、滝坂石はごく少ないことがわかった。
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