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当事務所管内の“白山市白峰地区”では、トチノキ(Aesculus turbinata)に実る「栃の実」を食す文化があります。トチノキとは、トチノキ科の落葉広葉樹で、適度に湿気のある肥沃な土壌で育つとされ、県内では白山麓に多く分布しています。その実には独特の”アク(苦みや渋み)”があり、食べるためにはこれを抜くための処理が必要です。
白山市白峰の太田の大トチノキ(天然記念物)
このトチの実を使用して、白峰の特産品であるとち餅を製造されている、(有)志んさの織田さんにとち餅にかかるお話を伺いましたので、ご紹介します。
Q:白峰のとち餅はいつからあるのか
A:昔から白峰にはヒエやアワと一緒に栃の実を煮て、栃粥として食す文化が有り、盆、正月などには貴重な餅米と併せて栃の実が主体のとち餅を食べていたらしいです。
その当時のとち餅は、あまりおいしいものではなかったようです。
その後、昭和36年に現在の店舗ができ、和菓子を学んでいた父親が現在の原型となるとち餅を商品化しました。
志んささんのとち餅
Q:トチの実の集め方について
A:主に自分で、白峰周辺で収穫しますが、地域の方が収穫し持って来てくれています。
今まで比較的安定した収穫量が得られていましたが、近年、気候変動などの影響なのか詳しい原因はわからないのですが、不作となる年
が増えてきています。
また、白峰は拡大造林を行った際もトチノキを伐採せずにその周りに杉を植栽するなどトチノキを大切にする地域だったのですが、独特の杢目が評価されトチノキ材の価格が上がり、伐採されることが多くなってきました。
栃の実を拾いに行くと、大きなトチノキが伐採されてぽっかりと抜けていることもあり、栃の実を集めるのも大変になってきています。
Q:とち餅の製造工程について
A:まず、栃の実を天日で50日程度乾燥させ、2~3年貯蔵します。
新しい栃の実は、きれいな色が出にくく、皮も剥きにくいので使用しません。
2~3年前の栃の実をお湯に1晩付け、その後金槌で叩いて実を取り出し、10日程度水にさらし、灰汁で煮て保温しながら2晩ほど放置します。
その後に水洗いして、餅米と一緒に蒸して餅をつきますので、製造に2週間程度かかります。
とちの実のアクぬき
Q:今後の抱負について
A:現在商品化されているクロモジを使ったロールケーキのような、山の幸を使った新しいことにもチャレンジしたいと考えています。
同時に、近年、観光地化されると昔からの手間のかかるお菓子がないがしろにされているのを目の当たりにしているので、本物のとち餅を残していきたいと考えています。
石川県には、このほかにも豊富な特用林産物がありますので、みなさまも機会がありましたらぜひ見て・触れて・食べてみてください。
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