ホーム > 連絡先一覧 > 白山自然保護センター > 研究成果 > 「石川県白山自然保護センター研究報告」総目次 > 「石川県白山自然保護センター研究報告」(第52集)要約
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八神徳彦・有本紀子・稲葉弘之
白山では外来植物の侵入を軽減させるために,登山道上に種子除去マットが設置されています。甚之助避難小屋付近の登山道上に設置された種子除去マットに溜まった土を回収し,プランターに蒔き付け,発芽する植物を調べました。その結果,現地由来と思われるヒゲノガリヤス,エゾギシギシなどのほかに,低標高地より侵入したと思われるウド,ネジバナ,ヒメジョオンなどと,試験中に周囲から飛散したと思われるスギ,タケケニグサなどが確認されました。これらのことから,登山者の靴についた土には,多くの植物の種子が付着し運ばれている可能性があり,一部は定着するものと思われ,今後も外来植物の侵入に注意が必要と考えられます。
「白山における外来植物種子除去マットの土から発芽した植物」(PDF:1,059KB)
岩本華奈・近藤 崇
近年,日本各地の高山帯において,気候変動に伴う積雪量の減少等により土壌が乾燥し,ササの生育範囲が拡大しています。ササが拡大すると高山帯の植生の多様性が低下すると言われており,白山でも弥陀ヶ原や南竜ヶ馬場でササの拡大と雪田草原の減少が報告されています。北海道大雪山では,ササの刈り取りにより雪田植物が回復した事例がありますが,ササの群落高が大きくなり雪田植物が完全に消失した場所でもササの刈り取りにより雪田植物が回復するのかは明らかになっていません。そこで,本研究では,白山弥陀ヶ原でササの発達度合の異なる3地点に方形区を設置しササの刈り取りを行い,ササの発達度合や残存している雪田植物の有無によって,ササの再生や雪田植物の回復の状況が異なったのかを調査しました。刈り取り1年後の時点では,ササの発達度合が小さいと再生したササの高さや植被率がやや抑えられていましたが,稈密度はササの発達度合に応じ差がみられず,雪田植物が残存していた箇所では,残存していなかった箇所よりも雪田植物の回復が大きかったです。
「白山弥陀ヶ原における雪田草原回復のためのチシマザサ管理手法の開発
2.ササの発達度合が1年後のササ再生および雪田植物回復に与える影響」(PDF:4,346KB)
岩本華奈・近藤崇・野上達也・奥名正啓
ツキノワグマ出没予測のため,秋季の主要な餌となるブナ,ミズナラ,コナラの雄花序落下量と着果度を観測することにより結実予測を行いました。調査はツキノワグマが生息する加賀地方を中心に,各樹種20-30地点程度に行いました。その結果,5-6月に実施した雄花序落下量調査および8月に実施した着果度調査では,県内全体としてブナは大凶作,ミズナラは豊作,コナラは並作と予測されました。ブナの作柄が悪かった一方で,ミズナラ,コナラの作柄が一定程度良かったことから,秋季のツキノワグマの大量出没には至らなかったと考えられます。しかし,過去に秋季の目撃件数が少なかった年の20-60件程度と比較すると,2023年以降は3年連続で100件以上とやや高い件数が続いていることから,警戒が必要です。
「石川県のブナ科樹木3種の結実状況とツキノワグマの出没状況,2025」(PDF:1,261KB)
川畠敦仁・北原岳明・近藤 崇・岩本華奈・有本紀子
白山麓のニホンジカ生息状況を把握するため,ライトセンサス調査を11月中旬から12月上旬にかけて4つのルートについて行いました。2025年は原沢4頭,五十谷4頭,市ノ瀬14頭の3つのルートで,計22頭のニホンジカを確認しました。2022年から2024年における各年のこのルートにおける総数が,1頭から4頭までであったのに対し,特に市ノ瀬で急増していました。
近年,ニホンジカの確認が増えてきている瀬波については,2023年から調査日数4日間をベースとして取り組み,2023年に17頭,2024年に34頭でしたが,2025年は18頭の確認に留まりました。2025年に関しては,積雪により調査日数が1日少なくなったことと調査日前の積雪に伴い,調査地点でもある瀬波ルート沿いの松尾山周辺からのニホンジカの移動も考えられ,その確認数の減少に影響していると思われます。
雌雄の比率については,前年と同様に雄が雌の約2倍確認されています。雄の比率が高いことからも,現状の白山麓は分布拡大の前期にいると考えられます。ライトセンサス調査を継続することは,白山麓におけるニホンジカの分布拡大状況の把握に寄与することが期待されます。
「白山麓におけるニホンジカのライトセンサス2025」(PDF:1,307KB)
近藤 崇・岩本華奈・有本紀子・内藤恭子
石川県では,ニホンジカ Cervus nippon(以下,シカ)は1900年はじめごろから100年ほどほぼ生息していない状態でしたが,近年は低標高地で分布拡大・個体数増加傾向です。白山国立公園の亜高山帯や高山帯においても,2013年以降,数年に1度程度シカの目撃情報があります。そこで,白山へのシカの侵入状況の把握することを目的として,2023年から白山の亜高山帯から高山帯で自動撮影カメラによる調査を開始しました。2025年はカメラ設置範囲を拡大して高山帯に10台,亜高山帯に16台のカメラを設置しました。その結果,高山帯では1地点で2回,亜高山帯では11地点で34回撮影されました。高山帯では3年連続でシカが確認され,亜高山帯では南北広範囲にシカが侵入していることが明らかとなりました。同一個体が複数回撮影されていると考えれるものが含まれており,現状の侵入個体数は少なく,一時的に通過している侵入初期段階と考えられますが,今後のシカの侵入状況の動向や高山植物への影響について警戒が必要です。
「自動撮影カメラによる白山の亜高山帯・高山帯へのニホンジカの侵入状況調査2025年」(準備中)
近藤 崇・岩本華奈
白山の亜高山帯・高山帯では,これまでにニホンジカの採食による高山植物の衰退は確認されていませんが,近年の自動撮影カメラによる調査により少数ながらニホンジカが高山帯まで侵入していることが明らかとなりました。そこで本研究では,侵入初期段階における高山植物への影響を把握するために,食痕調査を試みました。2025年の自動撮影カメラ調査時に,登山道沿いで食痕を探索した結果,キヌガサソウ,ノアザミ,ササ類などで食痕を確認し,計11サンプルを採取しました。サンプルはニホンジカ・カモシカ識別キット(株式会社ニッポンジーン)を用いて,食痕に付着しているDNAからLAMP法により採食した動物の識別を試みました。10サンプルは両種とも陰性となり,亜高山帯のササ類の1サンプルでのみニホンジカ陽性が確認されました。亜高山帯や高山帯では紫外線等による厳しい環境条件によりDNAが分解され,陰性となっている可能性が考えられるため,今後の食痕調査においては新鮮な食痕の採取やDNAの抽出方法の改良が必要です。
「白山の亜高山帯・高山帯におけるニホンジカの食痕調査の試み」(準備中)
八神徳彦・中田勝之・後藤理子
白山自然保護センターブナオ山観察舎において,2024年11月から2025年5月までの開館期間中に観察された動物の出現状況などについてとりまとめたました。対象としたのは,ニホンカモシカ,イノシシ,ニホンジカ,ツキノワグマ,ニホンザルの哺乳類と,イヌワシ,クマタカの大型猛禽類です。ニホンカモシカ,ニホンザルは期間を通して観察され,イノシシは厳冬期に多いが次第に減少し,ニホンジカは厳冬期に姿を消しました。ツキノワグマは11月末には冬ごもりし,4月になると雪解け斜面に芽吹く草を食べに集まってくると思われました。大型猛禽類の個体数は少なくとも,イヌワシ成鳥3羽,若鳥1羽が,クマタカ3羽が観察されました。
「ブナオ山観察舎における哺乳類および大型猛禽類の観察記録(1)2024-2025」(PDF:605KB)
八神徳彦
白山周辺で近年実施された小哺乳類の採集調査について,調査地の16ヶ所の概要,採集結果をとりまとめるとともに,採集された小哺乳類7種類76頭の外部計測値と標本の保存状況を記載しました。
「白山周辺における小哺乳類の採集記録と外部計測値」(PDF:744KB)
中田勝之・中村剛之
2026年1月,石川県白山市尾添のブナオ山観察舎周辺の雪上で石川県から2例目となるカネノクモガタガガンボを採集しました。本種はブナオ山観察舎周辺では2025~2026年の冬季間の調査期間中に1個体が採集されているのみで,生態情報も不明であることから引き続き調査を継続していく必要があります。
「ブナオ山観察舎周辺で石川県から2例目となるカネノクモガタガガンボの記録」(PDF:643KB)
中田勝之
ブナオ山観察舎(以下,「観察舎」とします。)周辺の生物多様性解明を目的として,2022年から2025年の冬季間に観察舎内でクモ綱および昆虫綱の採集調査を行いました。その結果,クモ綱は1目1科2種,昆虫綱は7目40科79種となり,計8目41科81種を記録しました。そのうち昆虫綱のカメムシ目の3科5種,コウチュウ目の1科1種,ハエ目の8科11種,ハチ目の2科3種の計20種が石川県新記録と思われる種で,これらは全体種数の約25%です。観察舎内で採集された種の約1/4が県新記録と思われることは,冬季の山間部での昆虫綱の調査が不十分で,引き続き調査継続の必要性があると考えられます。
「2022年から2025年にかけてブナオ山観察舎室内で採集されたクモ類及び昆虫類の記録」(PDF:748KB)
「白山自然保護調査研究会」令和6年度委託研究成果要約(PDF:454KB)
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