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巣立ち後のイヌワシの若鳥
日本の山に生息し、繁殖するワシタカの仲間では最大、最強の鳥。体長80~90cm、両翼を広げると2mに達します。全身黒褐色の鳥で、後頭部は黄金色に見えるため、英名ではゴールデンイーグル(golden eagle)と呼ばれています。若鳥には翼と尾に白羽があり、成長するに従い黒くなり、約4年で成鳥となります。
「石川県を象徴する名山白山に常住する留鳥であり、翼開長2mの雄々しい姿、勇猛果敢な性格は県民に広大進取の気風を高め、県勢を全国に雄飛させるにふさわしい。」という理由で、昭和40年1月1日に県鳥に指定されました。
平成10~12年に行われた調査で、県内には白山地域を中心に、北は金沢市の医王山付近から西は山中町の大日山西方までの山地に広く分布していることが確認されました。
その当時では、白山地域を中心に約15つがい、総数30~40羽が生息すると推定されていましたが、近年は更に減少傾向にあります。
一度つがいになると生涯連れ添うといわれ、山岳地帯にナワバリを作り一年中同じところで生活しています。晩秋のころ、つがいの2羽で一緒によく飛び回り、上下に波状に飛ぶなど目立つ行動で周辺のつがいに対してナワバリを主張します。隣のつがいのナワバリとの境界は、白山地域では主要な尾根からなっており、大きな谷ごとに別のイヌワシのつがいがすんでいることが分かっています。ナワバリの大きさは約20~60平方キロメートル です。
イヌワシの1年間の生活
巣造りは12月から1月ころで、白山では切り立った岩場で、上部がひさし状になり、雪や雨が直接入らない岩棚にブナやミズナラ、ヒノキなどの枝を運び入れます。巣の表面にはススキの葉やヒノキの葉など、やわらかい材料を用います。
産卵は2月で、2個の卵を4日前後の間をおいて産みます。雌親が中心に卵を抱き、42~45日で雛がかえります。その後70日くらいで雛は成長し、6月に雛は巣立ちます。
餌条件があまりよくないわが国では、無事成長するのは1羽がほとんどです。巣立った若鳥は親と一緒に生活し、飛び方や餌のとり方などを学び、秋には独り立ちできるようになります。
イヌワシの雛(ふ化後約5週間) |
イヌワシの成鳥と若鳥の飛翔 |
雛のいる巣に運ばれる餌を中心に調べたところ、ノウサギ、ヤマドリ、ヘビ類が主なものであることが分かりました。
晩秋から初冬にかけてはブナ林が落葉し、積雪を背景にしてイヌワシを一番見つけやすい季節です。この時期はまた、イヌワシの行動が一番活発になるときでもあります。
イヌワシを観察できる最も適したところは、白山市一里野の白山自然保護センターブナオ山観察舎です。この季節、天候に恵まれると半日滞在すれば、ブナオ山のどこかに見つかるでしょう。11月20日から翌年5月5日まで、年末年始を除き職員が常駐し、案内しています。また、春から秋までは白山自然保護センター中宮展示館や白山白川郷ホワイトロードで、上空を探すと見つかる可能性が高いです。
近年、全国的に繁殖成功率が低下していることが日本イヌワシ研究会の毎年の調査で分かっています。無事育つ若鳥はごくわずかしかいません。
県内の営巣地はほとんどすべて急傾斜地で、冬季の入山困難な場所であるため、繁殖に対しての人間活動による直接的な影響は少ないと考えられます。また、調査が困難で実態は、なかなかつかみにくい鳥です。
イヌワシは環境省の「日本の絶滅の恐れのある野生生物(レッドデータブック)」の絶滅危惧I類にランクされ、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種とされています。また、国指定天然記念物や国内希少野生動植物種でもあり、法的に守られている鳥ですが、保護のためには次のような配慮が必要です。
道路建設、ダム開発、送電線工事などはイヌワシの生息を脅かす恐れが高いので、分布域ではなるべく実施しない。やむを得ず行う場合には、事前調査を十分に行った上で、実施の規模や方法、時期について十分な検討が必要です。
とても神経質な鳥で、特に繁殖期には人の接近によって繁殖を中止することもあります。巣を中心とした一定の範囲(半径約1.2kmくらい)に人が侵入することを防ぐ必要があります。時期的には12月~6月で、特に抱卵、育雛前期にあたる2月~4月ころは最も危険な時期です。
餌場となっている場所、主な止まり場所、主な飛行ルートなどは、営巣場所に次いでイヌワシに影響を与えることが多いところです。調査によって明らかになったこのような場所へは、特に繁殖期の立ち入りを避けるべきです。
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