行財政改革大綱(改訂版)
はじめに
現在、わが国では、行財政改革、金融システム改革、経済構造改革など新たな社会・経済システムへの転換が進められている。地方分権についても、本年5月、機関委任事務制度の廃止など国と地方自治体が対等・協力の関係を築くことを基本とする「地方分権推進計画」が策定されるなど戦後長く続いた地方自治制度の根本的な改革をめざすものとして本格的な取り組みがなされようとしている。
本県においては、平成7年12月、行財政全般にわたる抜本的な点検・見直しを図ることを目的として行財政改革大綱を策定し、今日まで、広く県民の理解と協力を得ながら、その着実な実施に取り組んできたところであるが、現下の地方分権の本格化に伴い、新たな行財政体制の整備を図っていくことが急務となっている。
また、平成8年9月に策定した石川県新長期構想の推進を図るとともに、近年の本県行財政を取り巻く社会経済情勢の急激な変化に的確に対応していくためにも、この際、行財政改革大綱の見直しを行うこととしたものである。
今回の見直しにあたっては、先の行財政改革大綱の基本的な考え方を継承するとともに、地方分権時代にふさわしい行財政システムの再構築に着手していくことを中心として、以下の諸改革を実施するものである。
県民とともに築く県政を基本として、石川県新長期構想の実現と県民サービスの一層の向上を図るため、地方分権時代にふさわしい簡素で効率的な行財政体制の構築をめざす。
このため、特に、国、市町村や民間との役割分担を念頭におき、職員の資質向上、県民参加の促進、行政の透明性の向上及び政策評価機能の強化などに重点をおく行財政システムの再構築を図るべく、次の基本方針に沿って諸改革を推進する。
1 総合的な行政の推進とこれを担う職員の政策形成能力の向上
自主的かつ総合的な地域づくりを推進するため、部局横断的に施策を展開するとともに、組織体制の総合化など所要の体制整備を図る。
また、新たに人材育成に関する基本方針を策定し、これに基づく政策形成能力の向上など広く職員の資質の向上を図る。
2 国、市町村及び民間との適切な役割分担に基づく県政の推進
地方分権に基づく国や市町村との新たな対等・協力の関係に立った役割分担を図り、広域的自治体としての役割にふさわしい県政の推進を図る。
また、県民サービスの一層の向上と簡素で効率的な行政の推進を図る観点から、適切な役割分担と連携の上にたって民間委託などを進める。
3 県民参加による開かれた県政の推進
県民とともに分権型社会を築くため、情報公開制度や広報広聴制度の充実強化に努め、県民にわかりやすい、また県民が参加しやすい、開かれた県政の推進を図る。
4 事務事業評価システムの導入と効率的な行財政の運営
事務事業の成果を点検・評価するためのシステム導入を検討するなど効率的な行財政運営を推進する。
なお、現時点では、次に掲げる国の制度改正の全容が明らかとなっていないことから、法律改正等が行われた段階で、県として取り組むべき諸改革について必要に応じ所要の見直しを行うこととする。
地方分権推進計画に基づく法律改正
市町村への権限移譲など県と市町村との役割分担と連携協力のあり方
中央省庁再編に係る省庁設置法の制定
国と県との役割分担と連携協力のあり方とこれに対応する県の組織・機構のあり方
社会福祉基礎構造改革に基づく法律改正
社会福祉事業と保健事業の連携のあり方とこれに対応する県の組織・機構のあり方
財政構造改革に関する取り組み
短期的な景気対策と中長期的な財政構造改革との調整
1 推進期間
平成11年度を初年度として、推進期間は5年間とする。
2 推進体制
1) 行財政改革の進行管理体制
行財政改革を進行管理する庁内組織として行財政システム改革推進室(仮称)を新たに設置するとともに、引き続き、庁内の行財政改革検討委員会を中心に全庁的な体制で改革の推進に取り組む。
2) 県民の意見、提案の行財政改革への反映
行財政改革に関する県民の意見、提案の把握については、議会の審議や県民広聴事業などによるほか、引き続き、民間有識者からなる行財政改革推進委員会の審議をもって対応し、前記の進行管理体制で行財政改革に反映する。
3 実施計画の策定と実施状況の公表
本大綱に基づく各年度の行財政改革の実施計画及び実施状況については、今後、各年度ごとに策定する「実施計画」に記載し、公表するものとする。
4 数値目標の設定
行財政改革の実施にあたっては、できる限り実施年度を含めた数値目標を設定し、計画的な実施に努める。
- 年度の表示のない項目は、平成11年度からの実施予定とする
- 「○○年度以降」と表示した項目は、今後諸条件の整備等を行い、各年度ごとの「実施計画」に記載して実施年度を明確化する
5 国に対する要望
地方の自主的な行財政改革の一層の進展に向け、地方分権や規制緩和等の行財政改革を着実に推進するよう、引き続き、全国知事会等を通じて国に対して強く要望する。
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社会経済情勢の変化や行政ニーズの高度化、多様化に的確に対応するとともに、県民と一体となって自主的な地域づくりに取り組んでいくためには、これを担う職員一人ひとりの資質向上と能力開発が欠かせない。
このため、「人材育成に関する基本方針」を策定し、これに基づいて、職員の意識改革や政策形成能力等、広く職員の資質向上を図るとともに、人事管理面においても人材の育成に一層配意した対応に努めることとする。
(1)職員研修の充実
- 討議力、企画力、発表力養成研修の充実
- 管理者研修の充実
- 専門技術研修の充実
- 高度情報化研修の充実
- テーマ別研修の充実(ボランティア、バリアフリー研修など多様な講座の設定)
(2)職員提案制度の拡充
(3) 自己啓発の促進
(4)民間経験者の採用、人事交流の推進
- 職務経験者採用試験の拡充
- 市町村、中央省庁との人事交流の推進
- 他都道府県との人事交流の実施
(5)能力・個性を最大限に活かした人事管理
- 庁内フリーエージェント制(人事異動における公募
- 女性職員の企画、指導部門への配置促進等
(6)公務員倫理の徹底
地方分権の進展を踏まえるとともに、新長期構想の着実な推進をはじめとする新たな行政課題や多様な県民ニーズに適切に対応できる、簡素でわかりやすい行政体制の整備を目指す。
【本庁】
本庁組織については、地方分権時代を担うにふさわしい行財政改革の進行管理機能や政策評価機能の強化、行政の公正性の向上などに努めるとともに、高齢社会などへの適切な対応を図るための所要の見直しを行う。
このため、行財政システム改革部門の設置をはじめ、団体検査部門の一元化による独立性・専門性の確保、あるいは保健福祉部門の再編による機能強化を図りながら、引き続き、簡素で効率的な行政組織の整備に取り組む。
(1)行財政システム改革推進室(仮称)の設置
- 行財政改革の推進
- 市町村への権限移譲など地方分権の推進
- 事務事業評価システム導入の検討
- ガイドライン策定による民間委託の推進
- 県単独規制緩和の推進 など
(2)保健、福祉の連携強化を視野に入れた組織の再編
- 「厚生部」を「健康福祉部(仮称)」に改称
- 厚生部民生4課と衛生3課の再編(H12年度)
(3)震災対策室の防災部門へ
(4)職業能力開発施策のリエンジニアリング(職業能力開発部門の再編等)(H12年度以降)
(5)農林水産部水産課と漁港課の統合(H12年度)
(6)土木部河川課と河川開発課の統合(H12年度)
(7)出納課検査室(仮称)の設置(農協等団体検査業務の一元化)
【出先機関】
交通通信網の発達や人口動態、産業構造の変化など時代の要請に応じて出先機関の配置及び機能を見直し、総合化や拠点化により組織の簡素化とともに機能の充実・強化を図る。
このため、能登空港を核とする地域振興に向けた県事務所の総合事務所化を行うとともに、引き続き、地域住民の利便性の確保に配慮しつつ、組織の見直しに取り組む。
(1)看護大学の新設(H12年度)
(2)奥能登総合事務所(仮称)及び中能登総合事務所(仮称)の設置
(輪島事務所及び七尾事務所の総合調整機能の強化)(H12年度)
(3)輪島事務所珠洲税務連絡室の廃止(H12年度以降)
(4)保健所と福祉事務所の統合(H12年度)
(5)福祉事務所と児童相談所の統合(H12年度)
(6)広岡保育所の民営化等も含めた段階的廃止の検討
(7)総合看護専門学校の学科の見直し(H12年度以降)
(8)病害虫防除所を農業総合研究センターに統合
(9)農業改良普及センターの名称を廃止し、その機能を農林総合事務所農業振興部に統合(H12年度)
(10)河北潟営農センターと能登開発地営農センターの廃止
(両センターの研究部門を農業総合研究センターに、指導部門を各農林総合事務所に統合) (H12年度)
(11)土木事務所出張所(白峰、富来、穴水、門前、宇出津、町野)の本所への統合
(12)地方教育事務所分室(羽咋、珠洲)の本所への統合(H12年度以降)
(13)手取川水道事務所と送水管理事務所の統合(H13年度)
【公社等外郭団体】
県関係公社等の効率化、活性化を図るため、財務、業務にわたる再点検を実施し、類似団体や類似業務を統合するとともに、なお一層の運営の透明性の確保に努める。
(1)(財)健民公社と(財)いしかわ動物園の統合
(2)土地開発公社と住宅供給公社の管理部門等の統合(2法人1組織化)
(3)(財)創造的企業支援財団、(財)中小企業情報センター、石川トライアルセンターの統合((財)産業創出支援機構(仮称)の設立)
(4)(社)肉用牛価格安定基金協会と(社)畜産物価格安定資金協会の統合
(5)業務の見直し
県が50%以上出資の公社等の経営状況に関する外部監査の適用などを含めた再点検
(6)公社活性化協議会の活用による公社間の職員交流、研修の実施
【審議会等】
審議会等については、引き続き、簡素化、活性化と透明性の向上を図る。
(1)新設
必要性を十分吟味し、真に必要な場合に限って設置する。
- 審議事項が臨時的な審議会等については、設置期間を設定する。
- 審議会等の所掌事務をできるだけ広範囲のものとし、必要に応じ、分科会又は部会を設置して弾力的、機動的な運営を図る。
(2)統廃合
(3)委員選任基準等の徹底(兼職、就任期間等)
(4)会議等の公開等
原則公開とし、特段の事情により非公開とする場合は議事要旨を速やかに公開する。
(5)女性委員の登用
(審議会等の女性委員の比率を平成12年度までに20%)
徹底したスクラップ・アンド・ビルドにより、厳に総数を抑制するなかで、政策の変化や業務量の変化に応じた職員の適正配置に努める。
このため、毎年度、既定業務に係る定員の徹底した見直しを行い、新規需要等に対応することとする。
また、団塊の世代の割合が全国トップレベルであることから、職員の年齢構成の平準化方策を検討する給与等について、なお一層の適正化を図る。
(1)適正な定員管理
徹底したスクラップ・アンド・ビルドによる総数の抑制
(県立看護大学の開校に伴う教職員の増員に見合う一般行政部門の職員を平成15年度までに概ね80人削減)
(2)団塊の世代対策
早期退職促進措置の実施など職員年齢構成平準化方策の検討
(3)給与等の適正化
- 高齢層職員の昇給制度のあり方の検討
- 特殊勤務手当の見直し
- 旅費制度の見直し
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県と市町村は対等・協力の新しい関係を築く中、それぞれ広域的自治体と基礎的自治体としての役割を担いながら、共に住民本位の自治体行政を総合的に推進することとなる。
このため、住民に身近な行政は住民に身近な市町村が主体となって担うことを基本として、地方分権連絡調整会議を中心に相互に十分な協議を行い、市町村への権限移譲や市町村自らが取り組む広域行政の推進などを図る。
(1)市町村への権限移譲
国の地方分権推進計画に基づく平成11年の法律改正等を踏まえ、住民の利便性の向上や財政措置に配意しつつ、地域の実状に即した権限移譲の推進を図る。
なお、児童会館の市町村移譲について引き続き検討する。
(2)市町村の自主的な広域行政の推進に関する支援
市町村が自ら取り組む市町村合併や一部事務組合の充実強化、広域連合化等の広域行政の推進に関して、所要の支援、調整を図る。
(3)市町村職員の資質向上に対する支援の拡充
- 市町村との合同研修の拡大
- 市町村に対する職員研修ノウハウの提供
高度情報化社会にふさわしい行財政運営を図るため、高度情報通信基盤の整備や総合的な情報システムの構築を進め、事務の効率化、高度化はもとより、県民サービスの向上や広報広聴機能の強化、さらには市町村等との情報ネットワーク化などさらに行政の情報化を推進するとともに、これを担う職員の能力の向上に努める。
(1)いしかわマルチメディアスーパーハイウェイ(IMS)構想の推進
県民、行政機関、学術研究機関等が利用する情報ネットワークの構築
(2)広域的行政情報ネットワークの整備
県と市町村の情報システムのネットワーク化
(3)行政情報の電子化と総合的利用の推進
- 新県庁舎移転に向けたペーパーレス化推進運動の実施(庁内LANシステムの整備・活用、一人一台パソコンの整備)
- 電子決裁システム等文書情報の一元的管理の研究
- 新県庁舎総合情報センターの設置検討
(4)高度情報化研修の充実(再掲)
県民とともに県政を築いていくためには、県民の理解と信頼、積極的な参画を得ることが基本となる。
このため、県民に対する説明責任(アカウンタビリティ)等を的確に果たすとともに、県民が参加しやすい仕組みづくりを進めるなど、公正透明でわかりやすい、開かれた県政の推進を図る。
(1)公正で透明な県政の推進
- 情報公開制度の拡充(H12年度以降)
- 個人情報保護制度の創設(H14年度)
- 審議会等の透明性の向上(再掲)
- 外部監査制度の導入
- 財政状況の公表充実
- 入札・契約手続きの検討
(2)県民参加による県政の推進
- 広報広聴制度の充実強化
- 県民提案を県政に反映するための検討委員会の設置
- 民間非営利団体(NPO)、ボランティア等自主的な県民活動の促進に向けた環境整備
最少の経費で最大の効果をあげるよう、常に簡素で効率的な行財政運営に努める。
事務事業評価システム導入の検討をはじめ、改めて公共関与の妥当性と国、県、市町村の役割分担のあり方、費用対効果等の観点から事務事業の見直しを行い、さらに効率的な財政運営の推進を図るとともに健全財政の堅持に努める。
また、国に対して地方税財源の移譲など税財政制度の改革について引き続き強く要望する。
(1)事務事業の評価・見直し
- 事務事業評価システム導入の検討
- 社会資本の多様な整備方策の検討
- サンセット方式の拡充、予算の節減奨励、公共工事のコスト縮減など効率的な財政運営の推進
(公共工事のコストを平成9年度から3年間で10%縮減)
- 水道、病院事業など公営企業等の経営状況の再点検
(2)歳入の確保
- 税収の確保
- 適正な受益者負担による使用料及び手数料の見直し等
- 未活用資産の処分・有効活用
(3)中長期的視点に立った計画的・安定的な財政運営
- 将来の財政負担を勘案した新長期構想の着実な推進
- 基金の確保
- 県債残高の実状の公表
(4)外部監査制度の導入(再掲)
(5)国への要望
- 地方税の充実確保
- 地方交付税の安定的確保
(6)財政状況の公表充実(再掲)
- 「財政のあらまし」の改訂
- わかりやすい「予算書」への改訂
事務事業について、その必要性や効率性等の観点から不断に徹底した見直しを行い、一層の簡素合理化を図る。
また、「民間にできるものは民間に任せる」ことを基本として、民間委託の推進を図る。これにより捻出した財源を新たな政策課題に重点的に振り向けていくスクラップ・アンド・ビルドの考え方により、歳出額の増加を極力抑える。
県民サービスの向上を図る観点から、窓口業務や申請手続等について所要の見直しを行う。
(1)補助事業の見直し、整理統合
(2)貸付金・利子補給制度の見直し
(3)ガイドラインの策定による民間委託の推進
- 県民の利便性の向上が期待でき、行政のスリム化、効率化が可能な業務(庁舎管理業務、施設運営業務など)
- 公共サービスの質の向上が期待できる高度で専門的な業務(試験検査分析業務、電算システム開発業務など)
(4)県民サービスの向上
1 出先機関への権限移譲
2 金沢旅券窓口受付業務の時間延長、輪島旅券窓口の開設日数の増加
3 県税の口座振替制度の拡大の検討(自動車税など)
4 IMS構想推進(再掲)によるサービスの提供
- 県民遠隔学習テレビ会議システムの構築(各市町村公民館等での県民大学校や大学公開講座等の受講)
- 聴覚障害者テレビ相談支援システムの構築(遠隔地からの手話、筆談による相談)(H12年度以降)
- 住民基本台帳ネットワークシステムの構築検討(住民票写しの広域交付、転入転出手続の簡素化)(H12年度以降)
5 総合情報センター(再掲)におけるサービス提供の検討
- 各種案内情報の提供
- 「ワンストップ行政」によるサービスの提供の検討
6 試験・研究機関の県民への開放(講座等の開設、研究成果の積極的PR)
7 県有施設の一般開放(県立高校、農業短期大学等のグラウンドなどの開放)
8 県単独の規制緩和の推進
- 各種申請書等の押印の廃止等(全体の約50%を廃止等)
- 提出書類の簡素化
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