トキの歴史
(1)石川県におけるトキの生息状況
江戸時代初期の加賀藩史料にトキの生息の記録がある。
明治時代、乱獲や生息環境の悪化が進み、急速に生息数が減少。
昭和4(1929)年 眉丈山(びじょうざん)中でトキが誤殺され、能登半島でのトキの生存が確認。
昭和14(1939)年 眉丈山で17~18羽の群を確認。
昭和27(1952)年 特別天然記念物に指定(能登半島と佐渡島に生息)
昭和32(1957)年 輪島市洲衛(すえ)のアカマツ林で繁殖確認(2羽巣立ち)。
昭和36(1961)年 穴水町七海のアカマツ林で繁殖確認(2羽巣立ち)。眉丈山で5羽確認。
昭和39(1964)年以降、トキ1羽となる。
昭和45(1970)年 国の指示により、本州最後のトキ「能里(ノリ)」を穴水町で捕獲。佐渡トキ保護センターへ移送。本州からトキが絶滅。
昭和46(1971)年 能里が死亡。
本州最後のトキ 能里(のり)の剥製
(石川県歴史博物館収蔵)
能登のトキ生息分布図(昭和30年代)
能登は本州最後のトキの生息地であった。
最後のトキは昭和45(1970)年1月、穴水町で捕獲され、佐渡へ送られた。
<能登のトキの一年>
- 繁殖期 :(2月から5月) 奥能登の静かなアカマツ林で営巣
(2月 巣作り、3月下旬 産卵、4月中旬 ふ化、5月下旬 巣立ち)
- 夏 :(6月から9月) 餌場をもとめて眉丈山へ移動
(複雑な山田、多数のため池、豊富な餌)
- 秋から冬:群れを作り奥能登方面へ行動範囲を広げる
(豪雪期は、穴水湾の入り江に面した湿田や海岸など
(2)トキが日本の空に戻るまで
本州最後のトキ「能里(のり)」は能登で捕獲され、繁殖のために佐渡トキ保護センターへ移されました。同様に、昭和56年には国内で最後まで残っていた5羽が佐渡で捕獲され、日本の野生のトキは姿を消すことになりました。その後、懸命な努力を重ねましたが、トキの人工繁殖は思うように進まず、平成15(2003)年には日本産のトキは絶滅してしまいました。
その一方で、平成11年に中国から贈られた「友友(ヨウヨウ)」「洋洋(ヤンヤン)」のペアによる人工繁殖が成功し、同年に、飼育下では日本初となるトキの雛「優優(ユウユウ)」が誕生しました。その後も、個体数は順調に増え、平成31(2019)年2月現在では、国内で約200羽のトキが飼育されています。
飼育しているトキの数が増えたことで、国は、平成15(2003)年からトキを野生に帰す取り組みをスタートしました。佐渡では、自然環境を再生する取り組みが続けられ、平成20(2008)年、野生順化訓練を行ったトキが初めて佐渡で放鳥されました。平成31(2019)年2月現在、約350羽を超えるトキが野生で生息し、石川県にもたびたび飛来し、最近では、珠洲市や白山市で確認されています。
佐渡での野生放鳥の様子(環境省)
石川県に飛来したトキ
(3)石川県でのトキ保護の取り組みの経緯
戦後
- 能登におけるトキの生息・営巣・繁殖確認の報告が少なくなり、石川県は眉丈山での禁猟区を再設定、輪島市洲衛地区での禁猟区設定などの規制を実施。
昭和30年代
- 羽咋市、穴水町でトキ保護会(民間)や石川県トキ保護連絡協議会が結成。トキ保護に向けて組織化が進む。 眉丈山(びじょうざん)禁漁区を、それまでの10倍の1,500ヘクタールに拡大(昭和34年)。
昭和40年代
- 山階芳麿博士や中西悟堂先生などの鳥類学者の生息地視察、文部省の調査等が行われ、官民が一体となってトキの保護を実施。
平成元(1989)年
- 能登半島のトキ保護に長く関わった村本義雄氏が中国陝西省洋県のトキ保護のため資金支援活動等を開始(継続中)。
平成13(2001)年
- 村本氏がNPO法人日本中国朱鷺保護協会を設立し、中国陝西省洋県等との交流、支援活動等を実施。
平成16(2004)年1月
- 谷本知事が年頭の会見で「トキにゆかりのある石川県として、いしかわ動物園での分散飼育の受入れをめざしたい。 能登にトキが飛ぶ夢を描きたい。」と表明。
平成16(2004)年度
- 石川県トキ分散飼育受入庁内ワーキングを開催。
- 上野動物園、多摩動物公園よりアドバイザーを招へい。
- いしかわ動物園でトキ近縁種の飼育繁殖を開始。
- 県職員を中国陝西省洋県に派遣し、トキ保護の取り組み等を調査。
- 県民への普及啓発(トキパネル展、トキツアー)を推進。
平成17(2005)年度
- トキ分散飼育受入条件基礎調査を実施(~平成18(2006)年度)。
平成18(2006)年度
平成19(2007)年度
- いしかわ動物園でシロトキの人工繁殖とクロトキの自然繁殖に成功。
平成20(2008)年度
- いしかわ動物園でクロトキの自然繁殖(2年連続)とホオアカトキの自然繁殖に成功。
- 石川県トキ分散飼育受入検討会を設置し、石川県トキ保護増殖事業基本計画を策定。
- 平成20(2008)年12月19日に国が、石川県、島根県出雲市、新潟県長岡市をトキ分散飼育実施地に決定。
- 平成21(2009)年1月谷本知事が年頭の会見で、「今後は速やかに、万全の受入準備を進めて行きたい」と表明。
平成21(2009)年度
- 12月、いしかわ動物園にトキ繁殖ケージが竣工 。
- 平成22(2010)年1月8日、佐渡トキ保護センターから4羽(Iペア、Xペア)のトキをいしかわ動物園へ移送。昭和45(1970)年1月8日の能里捕獲以来、40年ぶりの里帰り。
- 1月17日、いしかわ動物園にトキ展示・映像コーナーがオープン 。
平成22(2010)年度
- いしかわ動物園で初のヒナ誕生。人工繁殖により合計8羽が巣立ち。
平成25(2013)年度
- いしかわ動物園において、初めて自然繁殖(自然ふ化・自然育すう)に成功。
- 1ペア(AWペア)を追加し、3ペア体制に。
平成28(2016)年度
- いしかわ動物園に、トキの公開展示施設「トキ里山館」がオープン。
平成29(2017)年度