ここから本文です。
トキがすめる環境をととのえることは、豊かな生態系を復活させることです。農薬の使用をへらすなどした、トキなどいろいろな生き物がすめる環境は、人にとっても安心安全な環境です。
トキのエサとなる生き物を守るために、田んぼを減農薬、無農薬にすると、そこでとれたお米が高く売れるなど、トキにも農家にもいいことがあります。
トキの生活にはエサをとる田んぼ、巣やねぐらを作る森林、どちらも必要であり、トキを守るためには、里山全体を保全する必要があります。
地域住民やボランティアが中心となり、お米をつくっていない田んぼに1年を通して水を張り、ビオトープを整備することで、トキのエサとなる多様な生きものが生息できる環境をつくっています。
また、トキとの共生のため、佐渡市や地域住民により「共生ルール」がつくられています。このルールでは、トキを驚かせないようにすることはもちろん、トキがエサをとるなどの自然な行動を邪魔しないように注意を呼びかけています。こうした取組の結果、地域全体でトキを見守ることにより、トキの行動や生態に大きな影響を与えることなく、人との適度な距離が保たれています。
雪の多い地方では、冬の田んぼに水をはる「ふゆみず田んぼ」という方法が行われています。田んぼに水を張ると雪が積もりにくくなり、冬のエサ場として利用することができます。
平成23(2011)年、国際連合食糧農業機関(FAO)によって、石川県の「能登の里山里海」と佐渡の「トキと共生する佐渡の里山」がともに、世界農業遺産に登録されました。
ビオトープの整備(環境省提供)
トキとの共生ルールを呼びかける看板(環境省提供)
将来的に、トキが増えることにより、農業被害が出たり、希少なカエルやサンショウウオを食べられたりすることが考えられますが、人間とトキ、どちらか一方ではなく、ともに生きていけるように様々な対策を立てなければなりません。どれかが大事ではなく、生きている自然そのものを守ることが大事です。
野生のトキを見かけたら、遠くから静かに見守りましょう。また、トキが街中で巣を作らないように、里山の環境をさらによくすることを目指さなければなりません。
人、トキも含めたたくさんの種類の生きもの全てにそれぞれ個性があり、複雑に関わり合って存在しています。これを生物多様性といいます。
ニホンウナギ
トキの保護増殖事業は、環境省が佐渡において実施していますが、鳥インフルエンザなどの感染症により再び絶滅しないように、佐渡のほかに東京都日野市の多摩動物公園、石川県能美市のいしかわ動物園、島根県出雲市の出雲市トキ分散飼育センター、新潟県長岡市のトキ分散飼育センターの4か所で分散飼育されています。
4か所の分散飼育地で生まれたトキは、放鳥するために佐渡トキ保護センターへ移送されます。放鳥するトキは、新潟県佐渡市にある「佐渡トキ野生復帰ステーション」で約3か月間、人になれたり、エサを取ったりする訓練を行います。
佐渡では平成20(2008)年に放鳥が始まり、平成24(2012)年に初めて野生で繁殖しました。なお、箱の中にトキを1羽ずつ入れて、一斉に蓋(ふた)を開けて野生に放す方法を「ハードリリース」、ケージの中で一定期間飼育した後に扉を開放し、トキが自然に飛び立つのを待つ方法を「ソフトリリース」と言います。
佐渡での野生放鳥の様子(環境省提供)
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください
同じ分類から探す