ホーム > 連絡先一覧 > 平成17年 シンポジウム > 「森林管理と野生動物保全の課題~クマを例として~」
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三浦慎悟(新潟大学教授・日本哺乳類学会会長)
全国のツキノワグマの生息域は25年前と較べ1.2倍とゆっくりと広がり、最近では林業被害のほか農業被害も発生してきている。その要因は暖冬による影響や、狩猟圧の減少による個体数増、中山間地での耕作放棄地が過去5年間で21万haにもおよび、ここが野生動物の生息地になりつつあることが考えられる。今後これらが本番をむかえるのではないか。
2004年のクマの異常出没の原因・要因は短期的要因と長期的要因に整理できる。短期的要因としては 1)堅果類の大凶作 2)ナラ枯損面積の拡大などであり、長期的要因としては 1)生息数の増加・回復?2)奥山林の変化,拡大造林地の成熟と生息地の移動3)里山地域の放棄と生息地化4)新世代グマの登場,狩猟圧の恒常的低下による順化5)誘引要因の増加があげられる。
秋田県のデータからはブナの豊作年には捕獲数は少ない傾向が、また、凶作年には捕獲数は増加する傾向が読みとれる。
また、東北地方においては、主要なクマの餌であるブナの実が前年豊作で、当年が凶作の場合に出没することが多く、作柄の比較によって出没を予想することが可能である。ミズナラの豊凶予測は難しくこれからの取り組みの課題でもあろう。
一方、クマの保護管理上の基礎資料となる、正確な分布と個体数データの収集把握は今後行政が責任を持って行っていく必要がある。(個体数推定の方法としてリンカーン・ペテルセン・モデルと、ヘアートラップ法によりクマの体毛による利用個体のDNA判定による個体数調査、東北地方における森林管理の状況が紹介された。)
最後に、野生動物の保護と管理には科学的データをもとに、行政と市民がそれぞれの役割を果たしていかなければならない。
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