玉泉院丸の発掘調査(22年度)
旧県体育館跡地の玉泉院丸整備に先立ち、平成20年度から遺構の保存状態を確認するための調査を進めている。平成22年度は泉水北東部で発掘調査を実施し、滝石組や護岸石組等の遺構を確認した。あわせて、玉泉院丸全域を対象に旧地形等を把握するための地質ボーリングを実施した。
調査期間 平成22年5月11日~12月17日
調査面積 400平方メートル
主な成果
- 平成22年度は、池の範囲や岸辺の構造確認に加えて、導水関連の遺構確認を目的として、池の北東部で発掘調査を実施し、池岸から背後の斜面にかけての南北20m、東西15m の範囲で、石組遺構を確認した。
- 池背後の斜面で、大型の赤戸室石の平石を階段状に伏せ置いた石組を検出した。石の形状や周囲の土層の特徴等から、導水路の遺構の一部と考えられる。急傾斜地に位置することから、落差の小さい滝が数段連続する「段落ちの滝」と考えられる。
- 滝が落ちる斜面の裾には、大型の石を弧状に連ねた石組が広がっており、そのうち幅10m 程を検出した。石は赤や青の戸室石や能登半島外浦産の安山岩や内浦産の砂岩など20数個からなる。石組は奥行きと高低差のある立体的な構成で、一部は滝の下段に連なるように造られていた。
- 池の水辺には護岸の石組が造られていた。土台石等からの転用材が多く、形や色合いの変化が面白い。石組の前面は池になり砂が厚く堆積していたが、石組背後でも整地層の下には砂層が認められた。池の改修時に、以前の岸辺を埋め立てて、新たに護岸石組をつくったことを示している。
- 作庭以前の地形状態等を検討するため、郭(くるわ)全域を対象にオールコア方式で計21地点のボーリング調査を実施した。その結果、鼠多門周辺の郭面は黒ボク自然層の上に厚さ約4~6mの盛土造成がなされていること、泉水東部には金沢城初期の空堀と見られる地盤の落ち込みがあり、これを埋め立てて池泉が造成されていること等を確認した。
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