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石川県は、わが国のほぼ真ん中に位置し、標高0メートルの海辺から2,702メートルの白山山頂まで、垂直的な広がりをもっています。 さらに、対馬暖流と冬期の季節風による多量の積雪の影響を強く受けるため、高度差による植生の変化に加えて、 海岸部の暖地性の植物から白山山頂部の寒地性植物まで多様であり、寒暖両系の植物が混在、共存することが特徴です。 県内の高等植物は183科2,549種とわが国で記録されているおよそ7,000種のうちの3分の1強の植物種が 確認されています。
また、丘陵性で古い時代から林業など人の活動により自然が改変されてきた能登地方に対し、加賀地方、 特に山が険しく長期間雪に被われる山岳地帯は植林地が少なく、人の手の入っていない自然度の高い植生が広く残されています。
白山山系では、概ね標高1,600メートルから上部を亜高山帯、標高2,400メートルから上を高山帯としていますが、 その境界は必ずしも明確ではありません。また、亜高山帯に一般的な針葉樹林は、白山地域では発達せず、 積雪の少ない尾根部にオオシラビソ林が見られ、積雪の多い斜面は、落葉広葉樹のダケカンバを主とする林が成立しています。
白山の高山帯は極めて狭く、高山帯植生がみられる山としては、わが国の西端に位置することから、白山を分布の西端としている 植物種はハイマツ、クロユリ、ハクサンコザクラ、アオノツガザクラなど100種類を越えます。
高山植物群落
石川県の植生の特徴として、ブナクラス域(冷温帯落葉広葉樹林帯)が他の地域に比較して極めて優勢で範囲が広いことがあげられます。 この範囲は、能登地方では概ね標高300メートルから上部、加賀地方では標高350から1,600メートルの間とされています。
自然度の高いブナ林は、主として白山麓から金沢市南部の標高1,000メートル以上の地域に分布し、イヌワシやツキノワグマ などの森林性の大型野生動物や鳥類の重要な生息地になっています。
ブナ林
昔から薪や木炭を得るために、伐採が繰り返されてきたところは、本来の植生が変化した雑木林と呼ばれる二次林(代償植生)と なります。県内ではブナクラス域の標高1,000メートル以下の地域やヤブツバキクラス域(常緑広葉樹林帯)の丘陵地帯に広がっており、 スギやアテ(ヒノキアスナロ)などの植林地とともに里山地域の森林をなしています。
低標高地ではウラジロガシやアカマツ、コナラ、標高の高いところではミズナラなどが主要な樹種で、カタクリやギフチョウなど 特有の生物が見られ、きのこ採りや身近なレクリェーション地として、親しまれています。
カタクリとギフチョウ
ヤブツバキクラス域の自然植生は、タブノキやスダジイ、ウラジロガシ、ヤブツバキなどの常緑広葉樹林であり、 厚く光沢のある葉から、照葉樹林とも呼ばれています。
この地域は、古代から田畑や集落として開発され、そのほとんどが人間活動によって改変されています。 ごくわずかに残っているのは、信仰の対象として保護されてきた杜叢林や険しい海岸の崖地に限られ、 その多くは保護上重要な植物群落として選定され、保護されています。
石川県には、河北潟をはじめ柴山潟や木場潟などの比較的大きな湖沼から河口域、山間の湿原、ため池や休耕田まで、 さまざまなタイプの湿地があります。これらのなかには、ガンカモ類の越冬地やホクリクサンショウウオ、 シャープゲンゴロウモドキなど希少な生物の生息地として重要なところが多くあります。
また、小松市横谷や白山市(旧白峰村)大嵐山などには、大きなミズバショウ群生地があり、ハイキングコースとして 親しまれているほか、近年、減少が著しいサギソウやトキソウ、ミズトンボなどが生育する湿地もわずかにあり、 保護が求められています。
ミズバショウ群生地
長い海岸線を有する石川県は、岩礁海岸や砂浜海岸など、多様で特色ある海浜環境に恵まれています。 能登地方の岩礁海岸には、ウミミドリやシオクグなどの耐塩性のある特殊な植物が生育する塩生湿地がみられます。 また、長大な砂丘のかなりの部分は、護岸や防風林、宅地、畑地などに改変されていますが、加賀市塩屋や富来町海士岬などには、 ハマゴウやイソスミレ、ハマヒルガオ、コウボウムギ、ハマナスなどからなる良好な海浜植生がみられます。
塩屋のハマゴウ群落
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