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有形文化財(書跡)
1幅
金沢市本多町3丁目2番29号
金沢市立中村記念美術館
金沢市
熊野懐紙は、後鳥羽院が熊野参詣の道中に廷臣らと共に開いた和歌会のおりの懐紙で、34枚が現存し、大部分が重要文化財に指定されている。このほかに、熊野参詣の途中の和歌会のものとして年代、場所等を確実にできないもので、熊野懐紙と同様なものが、熊野類懐紙とされている。この懐紙は、題に「詠餞遊女和哥」とあり、遊女への餞別として詠まれた和歌懐紙であるが、このような題の和歌懐紙は珍しく、この平家重の作のほか、藤原重輔(金沢市立中村記念美術館所蔵)、藤原信綱、源家長の作、あわせて4枚のみが現存する。信綱の作は名古屋市の関戸家に、家長の作は文化庁に所蔵され、共に重要文化財に指定されている。これらの4枚は、全て同じ席で詠まれたもので、舟に乗って帰る遊女への餞を述べており、当時、淀川下流にあった遊女の里江口、神崎あたりから懐紙の作者らによって都に招かれた遊女たちが帰途に就く際に詠まれたものとみられている。
この平家重作の懐紙は、「詠餞遊女和哥」の題に続いて、「散位平家重」と位署が書かれ、「ふねのうちみや/このことやしの/ふらんつゝみの/をとおなみにまか/へて」と和歌一首が詠まれている。
和歌の内容は、舟の上で鼓を打ち、都を偲びながら帰る遊女の姿を思い浮かべたものである。和歌一首を書く懐紙の形式によれば、3行3字になるところ、字が大きいため4行2字におよび、書風ものびやかで、和歌の2行7字目に「ふ」と書いて、その上に「の」と書き直したところがあり、酔筆の特徴がうかがえ、その場の雰囲気が想像される。
和歌懐紙は、本来、和歌会という儀式的な場で書かれるものであるが、この家重の懐紙は、遊興の場で書かれた異例のもので、自由な書式や誤字の訂正など、その場の雰囲気がそのまま書に映し出された希有なものとして価値が高い。また、力強い書風には、熊野懐紙にも共通するこの時代の書の特色がよく現れている。
遊女への餞別として詠まれた和紙懐紙で全国で4枚残っている熊野類懐紙のうちの一つとして貴重な資料であり、有形文化財として指定し、その保存を図ることが必要である。
熊野類懐紙(平家重筆)
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