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更新日:2024年6月24日

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御殿空間の総合研究(5年度)

事業概要

江戸時代前期以降、二ノ丸は金沢城の中枢を占めることとなり、御殿の建物群(領国支配の要としての「政庁」と藩主一族の「邸宅」の機能を併せ持つ施設)とともに、周辺施設(庭園・馬場、門・土蔵等)が配置され、それらが一体となって「御殿空間」を形成していた。
本事業は、表・居間・奥からなる建物群と、その周辺の庭や馬場等を含む「御殿空間」の全体を対象として、その使われ方や特徴を明らかにするため、総合的な研究に取り組むものである。
令和5年度は、「二之御丸御殿御造営内装等覚及び見本・絵形」(「内装等覚」、金沢市立玉川図書館蔵)の物質的・形態的側面を対象とした調査、二ノ丸御居間先確認調査等を実施した。なお、調査にあたっては、金沢城調査研究委員会・御殿空間専門委員会・伝統技術(石垣)専門委員会委員の現地指導を受けた。

調査の成果

ア 御殿の構成・意匠・機能等の調査研究

  • 「内装等覚」の資料調査

「内装等覚」の歴史史料としての価値を明らかにすることを目的に、モノとしての特質に焦点を当て、目視観察(顕微鏡観察を含む)・自然科学的分析等の調査を実施した。調査は、一般財団法人石川県文化財保存修復協会に委託して行った。なおこのうち、色材(色料)の分析等については、
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所に依頼した。
【装丁】文字のみが記されている第一冊は袋綴装、唐紙・棚小襖縁の見本が添付されている第二冊・飾金具の絵形が描かれている第三冊・第四冊は粘葉装である。第一冊には喉包・角包が施され、麻糸で本綴じ、紙縒りで中綴じが施されていた(袋綴装大和綴じ)。
【料紙】第一冊・第二冊貼紙等唐紙以外・第三冊・第四冊の料紙は楮で填料は米粉である。第二冊の唐紙は雁皮紙で填料は米粉である。
【編纂痕跡】総じて4冊とも文字の訂正や貼り紙の貼り直し、裁断の目当て痕や現状の装丁の前と考えられる番号付け等があり、1冊の冊子装にする際の編纂した痕跡が観察された。
【色材の分析】唐紙見本や飾金具絵形の色材については、顕微鏡観察・蛍光X線分光分析・反射分光分析等を実施した。
青色・白色の色材を基調とする唐紙について、「浅黄地白粉(彩)唐花輪模様」を例にとると、淡青色の「浅黄地」の下にさらに濃い灰色の下地が認められる。この下地は、カルシウムを主成分とする白色色材(胡粉)と、黒色色材(墨)との併用によると考えられる。「浅黄地」については藍が使われており、胡粉との併用が推定される。「浅黄地」に重なる「白粉(彩)」は雲母が主に使われていると考えられる。
他の唐紙では下地についてほぼ白色を呈するものもあり、この場合、胡粉が主体的に使われていると推定される。また同じ「浅黄地」でも、藍が主体的に使われているものもある。「浅黄地」の他には「白地」「キラ地」等があるが、それぞれ胡粉・雲母(白粉(彩)と同じ)が主に使わ
れていると考えられる。「浅黄地」「白地」「キラ地」に重なる模様については、「白粉(彩)」の他、「藍色」「紺」等があり、軽元素からなる青色色材や、鉄を含む黒色色材や雲母、スマルトや花紺青のような合成ガラス顔料等、多様な色材が想定される。
第三冊の飾金具絵形にかかる色材には、胡粉(白色)、藤黄(黄色)、水銀朱・鉛丹(赤色)、藍(青色)、藍+藤黄(緑色)、水銀朱+鉛丹+藍+胡粉または鉄系色材+胡粉(紫色)等が用いられている。このほか灰色には、黒色に近いもの、青み・赤み・黄色みのあるものなど微妙な色彩が認められるが、墨と藍等の色材を併用することで表現しているとみられる。

  • 二ノ丸御殿の儀礼史料調査、絵図調査

二ノ丸御殿の儀礼史料の内容確認・解読を継続するとともに、二ノ丸絵図の変遷と背景について検討した(研究紀要第22号に研究成果の後編を掲載)。

  • 現地指導

令和5年8月10日(木曜日)
二ノ丸絵図・儀礼史料絵図(金沢市立玉川図書館蔵)の資料調査(金沢城調査研究御殿空間専門委員会)

イ 御殿を取り巻く庭園等の調査研究─二ノ丸御居間先確認調査─

御殿を取り巻く庭園等の調査研究として、藩主邸宅に相当する御居間先の庭園(池・辰巳用水等)や馬場等の埋蔵文化財確認調査を行う。昨年に引き続き、御居間先の池の実態を確認するため、絵図と照合した位置で発掘調査を実施した。

調査期間:令和5年7月3日(月曜日)~11月30日(木曜日)  調査面積:70平方メートル

現地指導:令和5年10月26日(木曜日)・31日(木曜日)・11月9日(木曜日)(金沢城調査研究委員会委員、金沢城調査研究御殿空間専門委員会委員・伝統技術(石垣)専門委員会委員)

・前年度調査で一部検出していた粘土貼りの池は、南北3.0メートル、東西3.3メートル、深さ0.7メートルの規模を測る。内部にはタタキを使用した構造物片が埋められており、その下層に暗褐色の粘質土が厚く堆積している。絵図の描写に比べて小規模であり、上部が削平されている可能性等、検討するべき課題がある。また、この池と新旧関係にある緩やかな立ち上がりをもつ白色粘土層の広がりを確認しており、先行する池の可能性が考えられる。
・調査区南側で切石積石垣の一部とみられる石材を検出した。この石材は納戸土蔵西側にみえる石材と直線的に並んでおり、色紙短冊積石垣背後の石垣に縦目地の通る箇所の延長上にあたる。周辺の辰巳用水の経路については、近世前期より幾つかの絵図に描写されるなど、概要は知られているが、辰巳用水から色紙短冊積石垣の石樋への経路は不明となっており、確認した石積との位置や関係性が今後の課題である。

<- 令和4年度の成果

 

お問い合わせ

所属課:教育委員会金沢城調査研究所 

石川県金沢市尾山町10-5

電話番号:076-223-9696

ファクス番号:076-223-9697

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