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答申第16号
平成13年度教員採用候補者選考基準
教育委員会事務局教職員課
(1) 平成12年7月5日 公開請求
(2) 平成12年7月19日 一部公開決定
(3) 平成12年9月7日 異議申立て
(4) 平成12年10月3日 諮問
(5) 平成13年10月12日 答申
非公開とした平成13年度教員採用選考数値評価バランス表は、公開すべきである。
7条6号 (事務事業情報)
審査回数 12回
答申第16号
答申書
平成13年10月
石川県情報公開審査会
石川県教育委員会(以下「実施機関」という。)は、本件異議申立ての対象となった公文書については、すべて公開すべきである。
異議申立人は、石川県情報公開条例(平成6年石川県条例第28号)第6条の規定により、実施機関に対し、平成12年7月5日に「平成13年度教員採用候補者選考基準」(以下「本件公文書」という。)について、公文書の公開請求(以下「本件公開請求」という。)を行った。
なお、同条例は平成12年12月に改正公布され、改正後の石川県情報公開条例(平成12年石川県条例第46号。以下「条例」という。)は平成13年4月1日から施行されており、条例附則第5項の規定により、本件公開請求及び異議申立てはこの条例の施行前になされたものであるが、改正前の石川県情報公開条例の規定により行った処分、手続その他の行為は、条例の相当規定によって行ったものとみなすこととされている。
実施機関は、本件公開請求に対応する公文書として、本件公文書を特定した上で、本件公文書について、一部を公開しない旨の決定(以下「本件処分」という。)を行い、公開しない部分及びその理由を次のとおり付して、平成12年7月19日に異議申立人に通知した。
「平成13年度教員採用選考 数値評価バランス表(小学校)」、「平成13年度教員採用選考 数値評価バランス表(中・高)」及び「平成13年度教員採用選考 数値評価バランス表(養教)」のうち、表題以外の部分(以下「数値評価バランス表」という。)
条例第7条第6号に該当
具体的な数値評価バランスは、志願者が特定の選考資料で一定の成績を納めれば選考されるように誤解し、総合的な資質・能力を伸ばす努力を怠るなど、志願者の偏った受験準備を助長し、教育者にふさわしい人材の確保という選考事務の目的を妨げるおそれがある。
異議申立人は、平成12年9月7日に本件処分を不服として、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により、実施機関に対して異議申立てを行った。
実施機関は、平成12年10月3日に条例第19条第1項の規定により、石川県情報公開審査会(以下「当審査会」という。)に対して、本件処分の取消しに係る異議申立てにつき、諮問を行った。
異議申立ての趣旨は、「本件処分は、平成10年12月の平成9年度教員採用候補者選考基準の部分公開に準じた処分であり、その後の文部省教育職員養成審議会第3次答申等の状況の変化を踏まえたものとは考えられない」として、本件処分の取消しを求めるものである。
異議申立人が、異議申立書、意見書及び当審査会における意見陳述等で主張している要旨は、おおむね次のとおりである。
数値評価バランス表が条例第7条第6号に該当するという主張は、次の理由から妥当ではなく、公開すべきである。
「各試験・検査等の評価・判断基準並びにその相互間の評定バランス等を設定し、受験者の資質・能力を総合的に評価・判断している」のなら、公開によって混乱が起きるというより、むしろ選考事務への理解がより深まることが期待できると考えるのが常識的である。
また、部分公開された文書を見ると、数値化される項目は、筆記試験のみならず、論文試験、個人面接試験、グループ討論面接試験も羅列されているが、これら筆記試験以外の通常数値化しにくい試験を数値化するとき、どういう観点で、何を、どう評価するのかの内容が見られない。「数値評価バランス表」に、これらのことが細かに記入してあるとはスペース的に考えられず、「着眼点を推察し、基準に則した受験態度を取る」ことは、とても無理である。
仮に、着眼点が推察できたとしても、競争率が10倍を超える超難関の試験であり、受験者が扱いが軽いと思われる試験・検査を軽視して臨む試験などあろうはずがなく、むしろ望ましい教員像を明確にすることになる。
公開によって、受験者が総合的な評価・判断に不審・不満を抱くとしたら、選考基準そのものが曖昧で「総合的」になっていないためである。
また、ボランティア活動や社会体験等、数値化の困難な評価項目について、教員の資質を見る上で必要な内容と考えているのなら、それをどのように選考過程に組み入れ、客観的資料として使用しているのか、その説明責任は実施機関にあると考える。
教育職員養成審議会第3次答申「養成と採用・研修との連携の円滑化について」
(平成11年12月10日。以下「教職養成審答申」という。)は、「採用選考の透明性を高めて公教育への信頼性を確保するため、学力試験問題等の公表、採用選考基準の公表を検討することが必要である。」と述べているが、このことについて十分検討されたのか、納得のいく説明がされていない。選考基準の公開により著しい支障があるならば、審議会が公開を検討するように求めるはずがない。
採用選考が教育長の権限であればなおのこと、教員志願者、教育関係者、県民の理解と信頼を高めるために積極的に公開すべきである。
実施機関が主張している要旨は、理由説明書等から総合すると、おおむね次のとおりである。
数値評価バランス表は、次の理由から条例第7条第6号に該当すると判断し、非公開としたものである。
本県の公立学校では、自律的な人間、創造的意欲に満ちた人間、情操豊かな人間、実践力のある人間、広い視野に立って郷土を愛する人間の育成を目指しており、直接、児童生徒の指導にあたる教員には、新しい教育にチャレンジする情熱を求めている。
教員が今日的教育課題に適切に対応するためには、教職に対する高い使命感と豊かな人間性が一層必要となってきていることから、必ずしも知識の量のみならず、豊かな人間性を有した人材を確保できるよう、受験者の本来有する資質・能力・人間性を多方面から慎重に評価し、総合的に判断し選考している。
平成19年度教員採用候補者選考基準の非公開決定に係る答申(平成10年11月)に述べられているように、具体的な数値評価バランスは、その時々の社会的要請の変化に応じて、相対的なものであり、何人も納得する絶対的基準はあり得ないがゆえに、公開すれば、その当否をめぐって混乱が生じるおそれがある。
さらに、受験者が基準に合わせた受験準備や受験態度を取ることなどにより、各試験・検査等の結果が客観性をもたなくなり、ひいては総合的な判断にも支障を生じ、結果的に本県の教員としてふさわしい人材を公正かつ円滑に選考することに著しい支障を及ぼすおそれがある。
教員採用にあたっては、受験者の本来有する資質・能力を様々な角度から評価し、教員としての資質・能力を見極める選考試験制度が取られている。
仮に,数値評価バランス表が公開されるとなれば、総合的な評価・判断材料の一部である試験結果の基準や相互間の評定バランスに目が向くことは当然予想され、受験者が自己評価しやすい筆記・実技試験の結果や一部の試験・検査の結果と合否結果を短絡的に結び付けて解釈し、選考結果に不審・不満を抱くおそれも否定し得ず、今後、継続的に実施する選考事務の適正な執行に著しい支障を及ぼすおそれがある。
教員の採用は、選考によることが教育公務員特例法(昭和24年法律第1号。以下「法」という。)で定められ、教員の任命権者である教育委員会の教育長の権限とされているが、その選考の方法等については規定されておらず、教育長の裁量に委ねられているものと考える。
数値評価バランス表は、本県教育長が当該権限に基づき受験者を選考するために定めた手続であり、本来公開を前提としたものではない。
当該答申は文部大臣(当時)に対する答申でその採否は不明であり、法令改正もない以上、教育委員会及び教育長に対する法的拘束力は皆無であって、これに対して言及する必要性は認められない。
なお、本県では、従来より筆記・実技試験や適正検査、個人面接、集団面接と多方面の人物評価を行い、答申の内容に沿った総合的な選考を実施している。
また、選考の募集要項に記載した内容で、本県が求める教員像が既に明確になっていると確信している。
異議申立人は、「数値評価される項目以外にも十分関心が払われているから、数値評価バランス表が公開されても、選考に誤解が生じたり、偏った受験準備が助長されるとは言い難い」と主張している。
しかし、数値評価される項目において、当該傾向が助長されることは明らかであり、評価全体に対する影響を否定できない。
以上のことから、数値評価バランス表を公開することにより、今後、継続的に実施する教員採用候補者選考事務の目的が達成できなくなり、本事業の公正かつ円滑な執行にも著しい支障を及ぼすおそれがある。
条例は、地方自治の本旨にのっとり、県政に関する県民の知る権利を尊重し、公文書の公開を請求する権利につき定めること等により、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民の県政に対する理解と信頼を深め、県民参加による公正で開かれた県政をより一層推進することを目的として制定されたものであり、公開の原則に基づき適正に解釈・運用されなければならない。
当審査会は、この原則を基本として条例を解釈し、以下判断するものである。
(1) 公立学校教員の採用は、法第13条第1項の規定により、任命権者である教育委員会の教育長が行う「選考」によるとされている。
本件公文書は、同項の規定により、県教育長が平成13年度採用予定の石川県公立学校教員採用候補者を選考した際の選考基準であり、実施機関の職員が作成し、実施機関において保有している公文書である。
(2) 本件公文書には、選考の基本的考え方、選考者、評価項目、選考の手順、採用結果通知書の表記及び数値評価バランス表が記録されている。
数値評価バランス表には、評価項目1 として全ての受験者に課する教職・一般教養、論文、教科、個人面接、グループ討論面接及び実技の各試験に対する配点割合及び配点数が記録されている。
条例第7条第6号は、県の機関又は国若しくは他の地方公共団体の行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれのある情報が記録されている公文書は、公開しない旨規定している。
また、同号は、当該事務又は事業の内容及び性質に着目して類型化し、各類型ごとに、公にすることにより支障を及ぼすおそれのある事務事業を例示列挙しており、「監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関して、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」(同号イ)を規定している。
なお、「当該事務又は事業」には、同種の事務又は事業が反復される場合の将来の事務又は事業も含まれる。
(1) まず、数値評価バランス表が、「県の行う試験に係る事務に関する情報」に該当するかどうかについて検討する。
数値評価バランス表は、前記2の(2)に述べたとおり、法第13条第1項の規定により、県教育長が石川県公立学校教員採用候補者を選考するために実施した各試験に対する配点表であり、試験に係る情報が記録されていることは明らかである。
(2) 次に、数値評価バランス表が、「公にすることにより、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの」に該当するかどうかについて検討する。
選考事務の目的は、直接、児童生徒の指導に当たる教員としてふさわしい人材の採用にあり、知識の量のみならず、豊かな人間性を有した人材を総合的に判断することである。このため、本県においては、「評価項目1 」の多岐にわたる試験の結果と、「評価項目2 」の個人面接試験評価所見、適性検査結果、ボランティア活動歴及び社会体験等の7項目を総合的に評価・判断している。
実施機関は、具体的な数値評価バランス表を公開すれば、その当否をめぐって混乱が生じるおそれがあり、また、受験者の配点を意識した偏った受験準備を助長し、試験等の結果が客観性を失うおそれがあると主張する。
しかし、当審査会の調査では、当該試験の配点表をすでに公開している若干の先行例において、特段の支障は生じておらず、また、近年、ほとんどの大学の入学者選抜要領等には、論文や面接試験を含めた試験科目ごとの配点が掲載されている。
実施機関が主張するように、試験の配点に関して何人も納得する基準はないために様々な議論が提起されるとしても、教育長がこれを定めた理由を説明し、理解を求めれば足りることであり、将来の選考事務に対する支障の有無についても同様のことがいえ、むしろ本県が求める教員像を明確にすることに資するものと考えられる。
また、あらゆる試験において、受験者は当該試験に関する情報を収集し、自己の能力はどの程度であるかを把握する一方で、不足している分野を補うための学習等の受験準備をするのが通常である。したがって、数値評価バランス表が公開された場合、受験者が配点の高い試験のみに目を向け、教員としての広く深い知識や思考力を培う努力を怠るとは考え難く、本県の教員としてふさわしい人材を公正かつ円滑に選考することに著しい支障を及ぼすおそれがあると判断し得る具体的な根拠は認められない。
実施機関は、受験者が自己評価しやすい筆記・実技試験等の一部の試験結果と合否結果を短絡的に結びつけて解釈し、選考結果に不審・不満を抱くおそれがあると主張する。
しかし、一部の試験結果を自己評価できるとしても、すべての試験について自己評価することはできず、本件公文書のうちすでに公開された文書により数値評価の対象となる試験の結果は総合的な評価・判断材料の一部であることが明らかであるから、受験者が自己評価した試験結果と合否結果を短絡的に結び付けるという危惧は飛躍に過ぎ、選考事務の適正な執行に著しい支障を及ぼすとは認め難い。
実施機関は、教員の採用は選考によることが法に定められ、その方法等については教育長の裁量に委ねられており、公開を前提としたものではないと主張する。
しかし、選考の方法等を定めた情報を公開するか否かの判断は、記録されている情報が条例第7条第6号に該当するか否かによって客観的に判断すべきものである。単に、公開しないことを前提として作成されたものであるということだけでは、公開・非公開の判断に決定的な影響を与えるものではない。
また、選考基準の策定は教育長の裁量権ではあるが、これを公開することが裁量権を侵害することになるとも考えられない。
当該答申では、「各試験等のおおよその内容、比重や配点の目安を公表して、採用選考試験全体の情報公開を進め、これらにより教育委員会が求める教員像の全体を明確に示すよう工夫を講じること」を要望している。
これに対して、実施機関は、当該答申に法的拘束力はなく、言及する必要性は認められないとする一方、本県ではすでに当該答申の内容に沿った総合的な選考を実施していると主張する。
しかしながら、当審査会としては、より優れた資質能力を有する教員を確保するため、具体的に採用選考の改善の方向を示した当該答申を尊重すべきであると考える。
したがって、各試験の配点割合を定めた数値評価バランス表を公開することは、当該答申の趣旨に沿うものであり、ましてや選考事務に支障を生じるものとは考えられない。
また、実施機関は、募集要綱の記載内容で求める教員像を明確にしていると主張する。
しかし、募集要綱の記載内容は、「育成を目指す児童生徒像」であって、「求める教員像」であるとは認められない。
実施機関は、数値評価バランス表を公開すれば、受験者の偏った受験準備を助長することは明らかであり、評価全体に対する影響を否定できないと主張する。
しかし、アで述べたとおり、通常受験者は配点の高い試験のみに目を向け、教員としての広く深い知識や思考力を培う努力を怠るとは考え難く、公開により適正な評価に著しい影響が生じるものとは認め難い。
以上のことから、数値評価バランス表は、条例第7条第6号の、公にすることにより、「当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある」事務事業情報に該当しないと解する。
(3) なお、当審査会は、平成10年の答申において、すでに実施機関が数値評価バランス表について非公開とする主張を妥当と判断したところである。
しかしその後、教職養成審が選考基準及び学力試験問題等の公表の必要性を答申したこと、また、各都道府県が情報公開条例の改正において「説明責任」を明確に位置付けたことなどから、近年、教員採用にかかる選考基準及び試験問題の公開が進んでいる。
本県においても、情報公開条例が改正されるとともに、これまで非公開のため不服申立てがなされていた試験問題が公表されたところである。
これらのことを踏まえた上で、求める教員像をより一層明らかにするとともに、採用選考の透明性を高め、公教育への信頼性を確保するという公益性を考慮すれば、実施機関の主張する抽象的な支障理由は受け入れ難く、上記のとおり判断するものである。
以上の理由により、第1に掲げる審査会の結論のとおり判断する。
当審査会の処理経過は、別表のとおりである。
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
---|---|
平成12年10月3日 | 諮問を受けた。(諮問案件第33号) |
平成12年10月27日 | 実施機関(教育委員会教職員課)から理由説明書を受理した。 |
平成12年11月8日(第70回審査会) | 事案の審議を行った。 |
平成12年11月29日 | 異議申立人から意見書を受理した。 |
平成12年12月19日(第71回審査会) | 事案の審議を行った。 |
平成13年1月31日(第72回審査会) | 事案の審議を行った。 |
平成13年2月27日(第73回審査会) | 異議申立人から意見等を聴取した。 |
平成13年3月29日(第74回審査会) | 実施機関から非公開理由を聴取した。 |
平成13年4月24日(第75回審査会) | 事案の審議を行った。 |
平成13年5月29日(第76回審査会) | 事案の審議を行った。 |
平成13年6月27日(第77回審査会) | 事案の審議を行った。 |
平成13年7月25日(第78回審査会) | 事案の審議を行った。 |
平成13年8月31日(第79回審査会) | 事案の審議を行った。 |
平成13年9月11日(第80回審査会) | 事案の審議を行った。 |
平成13年10月10日 (第81回審査会) | 事案の審議を行った。 |
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